一日一生(5月号)
「本音と建前」




 暦の上では、5月5日から立夏となりました。文字通り初夏を思わせる「夏日」が続いております。各地では、運動会の準備が始まっていることでしょう。昨年も、熱中症のニュースを聞きましたが、健康にはくれぐれも留意していただきたいと思います。
 さて、今回は本音と建前について書きます。日本人は、この使い分けが多いように思いますが、実は世界中で見られることと思います。
 最近の流行語になっている「忖度」(そんたく)なる言葉ですが、まあ、空気を読むとか、時代の流れとさほど変わりが無いのではないかと思います。
 そんな折、アメリカ人で通訳をしている人に遭遇しました。そこで、私は、忖度を、あなたはどのように英語にしますか?と、聞いて見ました。彼は、難しいなといいながらも、まあ、unexpressed expectation(表現できない期待)と言っていました。私も前から考え続けていたのです。村上春樹さんによるならば、翻訳や通訳というのは、言葉や文化が違うのだから、そもそも難しい、できない作業です。言葉には、歴史と文化、さらに、宗教的意味が含められていますからと、語っていたことを思い出します。
 本論に入ります。政治の世界では、昔から「腹芸」なる言葉がありましたね。戦国時代での大名たちは、本音で話すことはめったになかったと思います。これだけで、今回終わってしまいますが、徳川家康にしても、人の心を試すために、ありとあらゆる方法を使って、大阪城を落城させました。裏切り、分裂風評を流して、不信感をあおりたて、結局、豊臣家は消えてしまいました。
 さて、今日ですが、政治家たちの右往左往、あっちの党、こっちの党と、信念もない、渡り鳥が都議会議員選挙、衆議院議員選挙を目の前に報道されております。
 本音で「東北でなくて良かった!」、ジャーナリストの質問には、「うるさい、出て行け!」などと怒鳴りつけた直ぐ後に、マスコミから批判されると、たちまち謝罪をするのです。本音を言っておいて、建前で謝罪をするということだと思います。
 「出て行けと言ったあなたが出て行った」(時事川柳)
1 安倍総理の本音と建前
 安倍総理は、最近、オリンピックを材料に、2020年までには、憲法改正だ!共謀罪法が成立しないとオリンピックはできない!オリンピック招致の時には、福島は、いまやアンダーコントロールだと言いました。建前が、すべてオリンピックで、本音は言わないことが感じられます。
 もう一つ、最近のニュースです。ここ一月、テレビ・ラジオ新聞では、北朝鮮のミサイル発射、核実験の恐怖を連日報道しました。その結果、東京の一部の地下鉄は止まったり、東武線も止まったりしてしまいました。私は過剰反応だと当初から思っていたのです。これは、森友隠しのために政府が危機感をあおっていると思いました。本音は、やはり森友隠しで、一刻も早く、安倍総理と昭恵さんのニュースを消去したかったのでしょう。
 皆さんにお聞きしますが、もし北朝鮮が日本に向けてミサイルを発射したとしたらどうしますか?私は手も足も出ません。それは戦争になるからです。建前では、アメリカ北朝鮮が牽制球を投げあっているだけだと思います。本当に戦争になったら、日本は、地下鉄に逃げるとか、窓から離れるとかいうようなことではすみません。韓国・北朝鮮を含めて、焦土化してしまいます。それよりも、私が思うのは攻撃して最も効果がでるのは、日本にある原発にミサイルを打ち込めば、それで終わりになると思うのです。その本音は、北朝鮮は、アメリカや日本を攻撃することによって、国内を一つにまとめたいとの本音があるのです。
 5月9日のニュースでは、トランプ大統領が、北朝鮮のジョンウンさんと会っても良い。そして、核実験をしなければ大幅に、譲歩することもありうるというニュースが出てきました。戦争の危機をあおるよりも、安倍総理が北朝鮮に行って、平和のために何故行動しないのかと私は思いました。ロシアには17回も行きました。去年から今年にかけて、アメリカへ行ったり、電話をしたり、外交は、めまぐるしく活動していたのです。文字通り積極的な平和のために貢献してもらいたいと願うばかりです。
 実は、4月30日に福島県浪江町に落雷があり、50ヘクタールが火災となりました。立ち入り禁止の所です。東京電力の原発から10キロ以内の場所にあります。マスメディアでは、落雷のニュースを私が聞いたのはNHKラジオです。しかし、放射能が風に乗って拡散するという話は、全くニュースになりませんでした。私が聞いたニュースは東電にかつて働いていた人からのメールでした。雨の日は、傘をさすことが良い、洗濯物は外に干さない方が良い、長時間外出する時は、マスクをした方が良いなどといったことが書いてありました。結局その火災が鎮火したのは5月10日、つまり11日間燃え続け、多量の放射能が東北・関東地方に撒き散らされたことと、私は思っています。放送規制があったのかと思いますが、注意報くらいはあっても良かったのではないかと思います。政府の本音は原発の推進ですからなんとかして、マイナスのニュースを国民に知らせたくないとの意思が感じられます。
2 私の体験から
 私は、かつてアメリカとフィリピンに旅行をしたことがあります。また、栃木県にあるアジア学院の留学生の多くの人たちに我が家に来ていただいて、色々な話をしました。
 アメリカには、一月程度でしたが夏のキャンプに1週間参加しての交流の中で、彼らの心の一部を知ることができました。最も驚いたことは、彼らは単刀直入で話をするという経験をしました。例えば、本人を目の前にし、私はあなたが好きだ!と、ダイレクトに言います。君はとても素敵だね!かと思うと、ちょっとおもしろくない時には「私は君が嫌いだよ!何でいつもイライラしてるんだ…などと、その人が受けた印象を直接表現する光景を目の当たりにして、私はビックリしてしまいました。
 そのように、自分の気持ちを直接表現するのが、英語圏の文化なのだと教えられました。日本では、そのように感じても、よほどのことでもないと言わないと思います。他方、影では、噂話が多いのも、日本文化の特徴でしょうか?建前では、ものごとをあらだてず、親しい友人たちの中で、本音を語り合うという文化なのではないでしょうか?
 先日のラジオで、室井佑月さんが、「あのさあ、私、電話で、ここだけの話だよと言って話したことが、10分後には、私の所に電話がかかってきたんだよ。これってなんなの…」と言ってました。
 さらに加えると、アメリカでは、どちらかというと、相手を褒める文化が日常多く見られると思います。会社では、上司が、部下の女性のことを、毎日褒めているというのです。「君の洋服すてきだね!君はいつも笑顔ですてきだね」というようなことですし、夫が妻に「愛してるよ」と、毎日言わないと、離婚の原因にもなりかねないという、冗談のような、本当の話だそうです。
 これは、まあ建前というか、挨拶のようなものではないかと感じます。映画などでは、男性が、妻以外の女性に口説き文句をどんどん言っていますね。日本の若者の間にも広がっているのでしょうか?
 このような表現を英語のドラマで、しょっちゅう聞きましたので、以下の様な言葉を覚えてしまいました。
 You know something?
 What?
 I love you.
 「きみ知ってる会?」
 「何なの?」
 「愛してるよ」
 そのような言葉が、毎日夫婦ばかりではなくて、アメリカでは飛び交っているのではないかと思います。アメリカでは、女性を大切にすること、褒めることが最低条件なのだと、旅行をして学びました。
 どれが本音で、どれが建前なのか?それは、二人の人間関係で暗黙のうちに伝わるのですね。日本でも、以心伝心は得意なことかと思います。ですから、忖度などという言葉が流行しているのです。以前も書きましたが、田原総一郎さんによるならば、太平洋戦争は、当時の空気としか言いようがないと、「塀の上を走る」で書いているのですから。
3 唯川ワールドの本音と建前
 今年になってから、友人の紹介で、唯川恵(ゆいかわけい)さんの本を10冊程度読みました。彼女は、1955年、金沢に生まれて短大卒業後、10年間銀行でOLをしてから、作家になりました。最近まで、私は全く知らない作家でしたが、読み出すと実に楽しく興味深い時には、男として、ちくりと胸を刺されるような話もあります。
 まず、何冊かオススメの本を紹介します。OL10年やりました、百万回の言い訳、不運な女神、だんだんあなたが遠くなる、ベターハーフなどです。
 20代、30代、時には、40代の女性が主として登場します。その中には、60代の夫婦も出てきます。一般企業で働くOLたちが、如何にして結婚相手を見つけるか?結婚をしてみたが、性格の不一致での、成田離婚、いやはや、私などが想像もおよばない世界がリアルに書いてあります。
 「これこそ女性の本音」、男の本音の世界です。野球に例えれば、150キロのストレートボールです。さらに加えて熟年離婚まで書かれていますから、恐ろしくなります。
 私の生きて来た60年は何だったのだろう?と、考えを新たにさせられました。唯川さんの率直な体験からの小説と思います。もちろん、フィクションもありますが、10年間銀行で働いた経験がふんだんに生かされております。
 現在彼女は62歳で、私とほぼ同年代ですが、これだけストレートに書いてもらえると良く分かり、「ありがとう」と、会って話したい気持ちになります。肩越しの恋、そして、百万回の言い訳を特にオススメしたいですね。
 さて、今年も後半に入ろうとしています。これからのニュースは、国会では、共謀罪法がどうなるか?7月に行われる都議会選挙がどうなるか?などがあります。憲法改正の話も、にぎやかになることでしょう。私は、もうマスメディアのニュースをすべて信じられません。その反対側、裏側を絶えず考えなければならないと思っております。
 それでは、また来月お会いいたしましょう。



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