一日一生(9月号)
思秋期によせて




 この題名は歌手の岩崎宏美さんの歌からつけさせていただきました。
 9月も半ばを秋が次第に深まってきました。藤原正彦著「国家の品格」の一節に、昔、子どもの頃、祖母が、ふと、秋になると寂しいね…と言っていたそうです。サトウハチローさんの「ちいさい秋見つけた」にも、哀愁と寂しさが感じられます。この季節、秋を思い、人生を振り返ることの大切さに思いをはせております。
 ところで、9月の10日には、栃木県福祉プラザで、音楽発表会があり、私たちの、音楽愛好会も、1年間の練習のそうしあげで、発表することができました。反省材料は幾つかあるとは思いますが、みんな音楽が大好き、8人のチームワークで、約30分楽しいひと時でした。やはり、目標があると良いものです。それぞれのグループが、味を出しての楽しい音楽会だったと思います。今年は、参加するグループがこれまでより少ないので心配をしましたが、沢山の人たちに来ていただき、心から感謝しております。
 世界に目を向けますと、9月に入って、メキシコでは、マグニチュード8を超える地震があり、11日現在、死者90人となっています。
 アメリカでは、8月には、テキサス州で、ハリケーン・ハービーが大荒れ!雨の量が125センチで、百万人が家を失い、被害額は20兆円と聞いております。9月になると、メキシコからフロリダ州に向けて、ハリケーン・アーマIrmaが襲い掛かっています。死者が現在のところ、60人と聞いています。
 日本でも、猛暑の夏と予想されていました。関東、東北では、8月は、21日間雨が降り続きました。
 異常気象と言いますが、J alertが突然なりだし、北朝鮮がミサイルを飛ばしたからと言って、テレビ・ラジオは、2時間避難の連呼、私は、もちろん安心安全に異論を唱えるつもりはありません。しかし、地下鉄までとまり新幹線まで止まることは、過剰反応と思います。
 韓国の人たちは、それほど気にしなくても、戦争にはならないよ!北も良く分かっているはずだ!との、市民の声が大きいと聞いています。
 各家の方にミサイルが飛ぶのではなくて、狙いは一定の所に定まっていると思うのです。何度か書いていますが、原発のあるところ、米軍基地のある所が最も危険な所だと思います。そのような時に、原発を停止しているのでしょうか?帰って、再稼動を目指しています。国民の安心・安全をいったいどれだけ真剣に、政府が考えているのかと疑問を感じております。
 私が幾つかの週刊誌、マスコミのニュースを聞くと、どこの国も戦争をしたくないというのです。戦争を始めたら、計り知れない悲劇と破壊、地球の危機になると思うからです。平和を作り出すために、圧力、制裁を加えるなどというのでは無くて、国家相互の信頼関係をつくりだすための努力をもっとして欲しいと強く願っております。
 ところで、9月は敬老の日があります。100歳を超えた人の数は、6万人を超えて、7万人になろうとしています。先ごろ日野原重明さんが、105歳で召天されました。立派な生涯だったと思います。歌のおばさんで私たちがこどものころ、ラジオで楽しませていただいだ、安西愛子さんが、7月に、百歳で亡くなりました。歌手や作曲家の中でも、多くの人たちが旅立っていきました。
 そのようなニュースを聞くと、私も、いつのまにか、高齢の仲間に入りつつあるのだなと感じないではいられません。気持ちは、青年の気持ちでも、病院から薬をもらい、血圧が高いなどと聞くと、やはり、一日一生なのだと思います。
 日本人は、世界の中でも、最も悲観的に考える国民性だと聞きました。これに対して、欧米の人たちは、楽天的に物事を考えての生活が圧倒的に多いと思います。
 1974年、私はアメリカのサマーキャンプに参加する時がありました。90歳を超えた、女性の視覚障害者が水泳を楽しんでいました。これには大変驚いてしまいました。何でもチャレンジしようという積極的な生き方。これは、学ばなければならないと、今でも思っています。
 最近は、日本でも、高齢の女性たちが、ヨガやダンス、卓球、ゴルフ、テニスなど、大いに活動していることを聞くと、元気になってきたなあと感心しております。男たちは、仕事をしている人たちも70歳を超えても元気いっぱいですね。しかし一人暮らしの男性の、14%が、2週間だれとも話をしないと聞くと、孤独感、認知症が目の前に迫っているのではないかとしんぱいします。朝から晩までテレビ、ラジオがお友達の生活は寂しい秋になってしまいますね。
 視覚障害者にとって、不便なことはありますが、最近の携帯電話のおかげで、友達とのおしゃべりができることは嬉しいことです。読書をしての感想を話したり、様々な交換ができることは感謝なことです。
 秋は、やはり読書の秋ではないでしょうか?人生を深く考える絶好の時と思います。
 私の読書ノート
1 佐藤愛子著「九十歳。何がめでたい」
 昨年ベストセラーになりました。筆者が、今年94歳になりますが、日ごろ感じていることをありのままに書いたエッセイ集です。喜寿、米寿などと、周囲の人たちが祝ってくれるけど、自分は年など気にしない。もう十分に生きてきた。しかし、生きているのだから、生活の中で思うことを、かってきままに書かせてもらうというようなことです。
 スマホ、スマホと人たちはいうけれど、自分は、使い方も分からないし、知りたいとも思わない…等、自由な発想で、時にはなるほどとうなずくこともあります。年配の多くの人たちも同感の人たちも多いことかと感じました。
2 佐藤愛子著「晩鐘」
 この本は、筆者の自伝的小説ともいえると思います。小説の形をとり、夫と妻は、架空の名前を使っておりますが、当時の作家の名前が次々と登場します。
 夫・畑中は、小説家でありますが、あまりパットしません。父親が大富豪なので、金には不自由をしません。会社を起こしますが、赤字続き、しかし、金を借りても返さない。不渡り手形の連発、妻の貯金もかってに引き出して会社の支払いにあてる。それでいて、困った人には喜んで、お金を差し出す、妻はたまりかねて離婚をします。
 畑中と分かれて、彼が再婚しても、不思議な人間関係が続きます。
 筆者の考えかと思いますが、結局、人間は他者を理解などできない。自分さえも理解ができないし、年をとって老いて死ぬ。私たちは、かく生きる、それで良いのだ。与えられた人生の道を歩いて行けば良いのだ。そのように感じました。
 娘、多恵が「うちの大黒柱は誰」と聞くと、母親は「それはママよ」と答えます。父親も「それはパパだよ」と答えます。娘は、うちには大黒柱が2本あるのね」といった会話があります。
 31歳で結婚し、娘が7歳で離婚をします。佐藤愛子さんの気の強さたくましさを痛感します。88歳から91歳の時に書かれた本。元気いっぱいのほんです。
 今年も残すところ3ヶ月となりました。おたふくかぜをした人で、300人を超える人たちが、難聴になっていると聞きました。具合が悪くなったら、すぐに病院へ行く習慣にしたいですね。健康をお祈りします。
 猿丸大夫(さるまるだゆう)
 奥山に、もみじ踏み分け鳴く鹿の、声聞く時ぞ、秋は悲しき。
 左京大夫顕輔(さきょうのだいふあきすけ)
 秋風に、棚引く雲の絶え間より、もれ出づる月の、影のさやけさ。
 (百人一首より)



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