第3回 マスメディアが劣化している




 皆さん、こんにちは。お元気でいらっしゃいますか?暦の上では節分立春となり、春となりました。早春賦の歌を思い出します。七日から、ソチオリンピック、九日には都知事選挙です。十日は、栃木県立盲学校創立105年の日になります。5年後は、にぎやかにお祝いをしたいものです。さて、今回は、ここ3年間、私が関わってきたマスコミの評価を書くことにいたします。
 話を3年前の3月11日の東日本大震災から始めます。原発の水素爆発から、私は日本の政府とマスコミの報道に限りない疑問と疑いをもち始めるようになりました。アメリカのニュース専門放送NPRでは、3月12日の放送では、「福島に住んでいるアメリカのみなさん、原発の地域40マイル(約64キロ)の外へ避難してください。」と言っていました。その頃、官房長官は、「5キロ以内の人は避難してください。10キロ以内の人は避難してください。」と繰り返していました。水素爆発という言葉は、一月以上もラジオからは聞こえてきませんでした。「安全です、安全です。」の連呼でした。その時から私は、日本のメディアに対して疑いを強くしていきました。それから間もなく始まった、東京電力の計画停電に疑問をもった私は、東電に電話をしました。「栃木県の電気消費量は1日どのくらいか?」、また「栃木県は、水力と火力でどの程度電力が可能か?」ということを聞きました。電話口に出た女性は、栃木県は1日260万キロワット/時であることを言ったので、「それならば計画停電の必要はありません。しかも、福島の原発からの電気は東京に送られているのでしょう」と言ったが、「今後のことを考えての計画停電です。」と、わけのわからない苦しい説明でした。オペレーターは、マニュアル通りに答えるように指示されているのだから、やむをえないのかも知れない。結局、その夏は停電をしなかったし、電気は余ったという。原発についても、アメリカでは先のように放送をしていますよと言うと、それは何かの間違いでしょうと相手にされませんでした。
 次は2012年7月のことです。6月の頃から、大江健三郎さん、落合恵子さんたちが中心になって、毎週金曜日の夜に、国会周辺で原発再起動反対のデモが活発になりました。民放では、そのニュースを折りにふれて、ニュースで取り上げるようになりました。NHKでは、そのデモについてはニュースにしませんでした。6月下旬には参加者が10万人となりましたが、それでもNHKは報道しませんでした。7月11日に、上野動物園でパンダの赤ちゃんが死んだというニュースが大きく取り上げられ、私はたまりかねて、東京のNHKの報道部に電話をして、「NHKは、どうして原発再起動の反対デモをニュースにしないのですか?」と聞きました。電話に出た女性は、「ニュースについては、NHK独自に総合的に判断して報道をしています。」との小泉元総理大臣のような回答が来ました。そこで私は、「パンダの赤ちゃんが亡くなったニュースの方が、15万人の原発再起動反対のデモよりも大切だとNHKたる所が、総合的に判断しているのですね。アメリカのラジオでは、連日、福島第1が今や世界共通語のようになっていますよね。NHKには、国際放送があり、全て把握しているのですから、国民に正確な情報を提供してください。」といいました。すると、その女性、困ったような声で、「お客様のご要望は上に伝えておきます。」と回答しました。このことがきっかけとなったとは思いませんが、それから数日後、NHKでも原発反対のデモのニュースが報道されるようになりました。「NHKは変だよ!」との、民放での声も聞こえたのだと思う。
 今やテレビと新聞のニュースはあまり信頼できない。むしろ、週刊誌の方が正確なところを感じます。「週間現代」では、2012年11月に衆議院選挙は12月16日と大胆に予測していました。また、猪瀬都知事のことについても、辞任は決定的と、昨年の11月に書いていました。新聞報道よりも週刊誌の方が大胆に書いています。
 福島第1原発がメルトダウンを起こしている時、当時、官房長官の仙谷氏は、「原発反対なんていうやつは、ヒステリーになっている連中だ」と豪語していました。そして、昨年10月になって、小泉元総理がフィンランドに行って、原発の再処理について調査をしてきました。地震の少ないフィンランド、10万年間は地中千メートルの深い所に埋めなければならないことを知って、日本のような地震の多い国では、そもそも原発は誤りである。総理が先頭に立って、直ちに原発の「ゼロ」を決断し、新たなエネルギー開発と成長をすることによって、技術革新と成長をすれば、雇用を生み出し、日本の再生が可能となると発言し、大きな影響を与えています。2012年の原発再稼動反対の国民的行動が、今日の世論を動かし、政府に大きな再考を促していると思います。国民の70パーセントが、原発再稼動に反対しているのです。雇用問題、経済成長の問題はあります。しかし、私たち一人ひとりの命と生活が最重要課題ではないかと確信します。元東京大学地震学教授は、今年3月までに「南海トラフ地震が起きる確率が高い」と警告しています。
 そこにきて経済産業省の大臣が、電力会社から年間1千万円の献金を受け取っているという、記事が朝日新聞にスクープされました。しかし他のメディアは、朝日新聞に出し抜かれたこともあって、沈黙を守っています。電力会社からパーティー券献金を受け取っている国会議員は何人いるか分かりません。それらは、私たちの電気代から送られているのです。電気代の料金が上がるのは、ガソリン・灯油の輸入品ばかりではないのです。最近分かったのですが、ガソリン・灯油の値上がりの結果、電気代が上がるよりも、実は円安による影響の方が実際は大きいということです。政府はこのことには全く触れていません。再稼動推進者はガソリン・灯油が高いから、電気代が高くなる。それよりも、原発の方が安いとのすり込みにかかっています。しかし、円安1ドル85円から110円まで、円安になった方が国民生活を圧迫し、電気代、輸入品を押し上げているというのです。また、円安になっても、主な企業は外国に出て行き、企業活動をしているので、輸出も政府が思うほど成果を上げることができません。「上げ潮は引き潮」になっているのです。物価が上がって苦しんでいるのは、大多数の国民です。
 次に、今年になっての日本テレビとの問題について書きます。1月15日水曜日の夜、10時から11時まで、日本テレビでは「明日、ママがいない」というドラマが放映されていることをご存知ですか?これが大問題で、インターネットや新聞で大きく取り上げられていますが、TBSラジオの10時からの「セッション22」と、1月29日・30日の「デイキャッチランキング」で取り上げられました。NHKでは、全く報道しておりません。「明日ママがいない」というドラマは、養護施設の子どもたちを取り上げています。親に育てられない幼い子どもには、「ポスト」という渾名をつけ、母子家庭を酷評し、養護施設をペットショップ、子どもたちを犬猫と呼んでいます。里親も登場しますが、里親は「ペットの飼い主」になっているのです。1回目のあまりにも酷い番組に、クレームが日テレに殺到しました。特に、コウノトリの活動(子育てをできない赤ちゃんを、そっと箱においていく)という、小さな命を守る運動を始めた、熊本県慈恵医大から、即時、停止の抗議文が出されました。続いて、全国児童養護施設協議会からも抗議文が出されました。私たちの全国里親会からも、人権侵害、子どもたちへの偏見と差別を助長するという抗議文が提出されました。私も、いたたまれず、二日後、日本テレビのクレーム担当に電話をしました。約20分、話をしました。私がまず聞いたのは、日本テレビでは、児童養護施設に預けられている子どもが何人いますか?里親に預けられている子どもの数は何人いますか?との質問から始めましたが、電話口に出た女性からは回答はありませんでした。番組のチーフディレクターは知っていますか?これにも無回答でした。つまり、テレビ局は視聴率が上がれば何でもOKということのようです。1月22日の放送では、スポンサー8社のうち、3社が辞退しました。そして29日からは、8社、すべてのスポンサーがCMを辞退することになりました。そうこうしているうちに、慈恵医大と全国児童養護施設協議会から、放送倫理委員会(BPO)に、番組の適切かどうかの審査依頼が出されています。日本テレビの社長は、「重く受け止めます」とのコメントが出されました。
 30日に、児童養護施設協議会と全国里親会の代表と日本テレビが話し合い内容の変更を約束、2月4日に公表するというところまでこぎつけました。
 これがここまでのあらましです。私が電話で、最後に申し上げたのは、社会的弱者をドラマとして取り上げる時は、当事者を正しく理解し、当事者の人権を守ることが大前提となるべきです。「これはフィクションです」と言っても、ドラマに該当する子どもたちが、養護施設には3万人、里子として預けられている子どもたちが8700人いるのです。これは、子どもへの愛情を表しているので、最後まで見てもらえれば分かりますと、言っていますが、大きな誤りだと思います。私はその後、インターネットで関係する内容を調べてみました。すると、驚くべきことが分かりました。第1に大抵の場合、テレビ局は、プロダクションに番組をまるなげしていることです。視聴率が稼げれば、少々問題があっても良いとのことです。もう一つは、法政大学教授・水島宏明氏のサイトを開くと、最近のテレビ局は、当事者の取材を手抜きしている。何か特番を作成したい時に、プロデューサーが、水島さんのところに来て、「今度こういう番組をしたいのですが、誰か適当な人を紹介してください。」と、直ぐにやってくるそうです。時間と金をかけるよりは、社会学者で精通している、水島先生に聞けば良いとの考えのようです。水島先生は、今回の「明日ママがいない」も、そういう当事者の取材もほとんどなされていないのだと書いております。その他、新聞記事も劣化しているとありました。山中教授がIPS細胞で、すばらしい業績を上げた時に、ひとつの新聞社が山中教授よりも、もっと先に研究をしている人がいると、大々的に発表してしまいましたが、それは ガセネタでした。業績どころか学歴も詐称でした。
 最後に私は、先ごろ批准された障碍者の権利条約のことについても同じようなことがありうると思います。児童に関しては、児童権利条約がなされております。表現の自由だからと、何を言っても良い、作り話だからどんなドラマでも良いとは言えません。子どもに対する虐待は、1年間で70万件におよぶと言われています。そのような時代背景を助長するようなテレビドラマの視聴率を上げるために放映されては、当事者の子どもたちが被害者となってしまいます。翌日、ある小学校で、養護施設の子どもに、「おまえもポストか?ペットか?」との言葉が出たとありました。もうすでに100件を超える子どもたちが、言葉によるいじめを経験しています。教育界で、このようなことがあったら、大ニュースですが、テレビドラマならば良いということにはなりません。実は、総理のパートナー、安倍昭恵さんも、東京にある養護施設で後援会長をしていると聞いて、嬉しくなりました。立場上、今回はコメントを出していませんが、「心を痛めています」と、ネットにありました。賛否両論はあると思います。2月12日までは放映されます。皆様のご意見を「とちのみ会」まで投稿していただけましたら、感謝です。
 次回は、2月22日になります。お互いに健康に留意してまいりましょう。立春は 冬本番と 言うことか(時事川柳より)



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