第23回 格差社会を考える




 皆様、こんにちは。いよいよ12月になりました。お元気でいらっしゃいますか?
 さて、今回は様々な社会問題の中から、広がりつつある「格差社会」について書きます。最近、厳しく、冷たい社会の雰囲気を感じてしまいます。それらを、私の私見ではありますが、書かせていただきます。
1 経済的格差
 アベノミクスの掛け声の下、ここ2年間で、円安と株が上がり、大企業と富裕層が豊かな生活を送っています。企業の内部留保金が300兆円といいます。それらを、どうして社員たちや社会貢献に振り分けず、蔵の中にしまっているのでしょうか?株も上がり、投資家たちは、その恩恵にあずかっています。最近のニュースでは、年収1億円以上の収入のある人は百万人を超えているというのです。それに対して、年収200万円以下の非正規社員の数は、ついに40%超えて、1892万人となりました。その中の1192万人が貧困層です。また、驚いたことに、全人口の31%(非正規社員と思います)が、貯蓄保有額が0というのです。安倍総理は、雇用が100万人増えたといって、景気が良くなったことを強調していますが、その100万人とは、ほとんどが、非正規社員です。むしろ、正規社員が9万人減少しています。正式に雇用されている数は、3千5万人と聞いております。不景気になれば、多分オリンピックが終わり次第、またもや不況となることでしょう。
 さらに中小企業では、円安の影響を受けています。先日のニュースでは、トヨタ自動車の下請けのまた下請けでは、部品等の輸入品アップのために、従業員の時給は10円も上げられないとのニュースがありました。デフレを脱却して景気を良くしようという政策でしたが、輸入品が上がり、物価が上がっても、賃金が下がってしまう社会では、国民の90%が生活苦に追い込まれてしまいます。
 今年になって、倒産する会社は、昨年より2.8倍になっているというのです。この傾向は残念ながら、さらに増加して行くのではないかと心配しております。本来景気が良くなるというのは、需要が増えて、供給が過剰になった時、給与が上がり、物価が自然に上がっていくのが望ましい姿と思いますが、今回のように、日銀が無理やりに金融を緩和し、10兆円を超える金を国内に流出しました。それを各銀行に押し付けるのですから、銀行としてはやむを得ず引き受けます。国債での利子を期待してのことです。従って、私たちの銀行の利子が、0.001であっても、国債を引き受ければ、年利0.6の利息で銀行は運営しているのです。銀行がいくら貸し出しをしたくても、このように不景気では、会社は国民の高い需要が期待できないのですから、おいそれと設備投資をすることができません。この点については、日銀、政府も誤った判断をしてしまったと言わざるを得ません。飲食店でも物価の高騰を商品に織り込みたいのですが、消費者は、生活を守るために、値上げする飲食店はできるだけ避けます。また、その数を少なくするのだと思います。
2 若者たちの苦しい生活「ブラックバイトの増加」
 私が学生時代だった頃は、下宿生活をしていると、親からの仕送りがあり、学生たちは、自分の生活を豊かにするために、アルバイトをしていました。ところが、最近の学生の中には、親が先に書いた非正規社員のために、自分で月謝や生活費を稼がなければならない学生が増えているのです。11月24日のNHKラジオの特集によると、1日12時間バイトをしている人、また、二つのアルバイトをかけもちしている人もいると聞いて驚きました。大学に行っても、つい「うとうと」と眠ってしまうのです。大学生のアルバイト生の中でも、バイトのリーダーを決めて、ローテーションを組んでいます。「バイトを止めます」というと、それをストップさせたり、時には脅かしたりするのも、バイトリーダーですから仲間たちになってしまうのです。学生たちの多くがこのように疲れ果ててしまい、学業という、本来の目的を見失ってしまっています。これは最近、相当の数の学生がいると思われます。飲食店でのバイトですから、さぞかし大変なことではないかと思います。
3 ヤングケアラー
 高齢化社会を迎えていますが、両親や祖父母が高齢化を迎え、大学生を含めて、独身女性が仕事をしながら、家族の介護のために、疲労困憊していることを今回の特集番組で知りました。施設に入りたくても入れない待機している高齢者が、52万人もいると聞いて驚いてしまいました。
 本来ならば、病院、特別養護老人ホーム等に入らなければならない人が在宅です。そうなると、その介護は、多くの場合、女性になってしまいます。学生たちの立場からすると、祖父母の世話を、母親と協力して介護をしているケースが多くあります。老人夫婦の介護による、老老介護が増えており、介護の限界に達すると、疲れ果てての殺人事件や自殺が増えてきています。楽しい老後が、苦痛と悲しみに追い込まれる格差社会が蔓延しているのではないでしょうか?
4 教育界における格差
 子供たちが減少し、教師の退職者が多くなりました。教師の待遇は比較的良く、出産に当たっては、最高3年間休職を取ることができます。これは、大変恵まれた待遇と思います。教育委員会はその抜けた埋め合わせをするために、1年契約の常勤講師を大量に採用しています。教員の免許を持っていれば、常勤講師の資格があります。問題は、1年単位の契約なので、教師が入れ代わり立ち代りします。昨年のデータでは、全国の教員の数は、55万人ですが、そのうちの7人に1人、7.5万人が1年単位の常勤講師です。毎年、教員採用試験を受けても、採用する数が少ないのですから、これは大変な難関です。私の知っている人の中には、20年間毎年更新しての常勤講師がおります。同じ仕事をしていても、教育界でも、給料がかなり異なりますから、格差社会が広がっております。
 最近、文科省は、1学級35人からさらに40人にしてはどうかとの提案をしようとしています。2020年から、小学3年生から英語を導入して、中学生になったら英語の授業を全て英語でできるようなカリキュラムにしようというのです。これは、現実を知らない「机上の空論」としか言いようがありません。
 アメリカでは、小学校から中学校まで、一クラス20人程度です。生徒たちは、教師の発言に質問や意見があれば、先を争って、自分の意見を出します。日本の教育では、一部のディベート等を除けば、相変わらずの講義方式です。教師が黒板に書いたメモを写しが基本です。それならばまだ良い方です。最近の高校生は、先生が黒板に書いたものを、携帯でパチリと撮って、後でコンピューターで読み込んでプリントアウトすればOKだというのです。基本的に、日本の精神構造は間違えたら恥ずかしい、意見を言って反対されるのが嫌だという日本人特有の自己規制の文化を打破しなければ、話す力は見に付かないと思います。語学を身につけるのには、恥と外聞をかなぐりすてることだと、私は自らの体験から確信しています。国会議員のどれだけの人たちが英語で直接話ができるのでしょうか?有名大学を卒業しても、たいてい通訳つきで、海外へ行っているのではないかと思います。
 いずれにしても、教師間にも格差が広がり、子供たちも両親の生活力の影響をもろに受けて、授業料・修学旅行の費用を払えず、中途退学する子供たちが増えています。小学生から高校生までで、17万人が不登校だというのです。これでは、彼らの就職や進学にもすでに格差ができてしまっているのです。
 我が家の高校2年生の娘ですが、12月2日から6日までの修学旅行で沖縄に出かけています。入学当時、1学年300人いました。今回の旅行で、47人が修学旅行に行くことができませんでした。4人が部活動のために欠席、残りの43人が、経済的に負担することができずに断念したというのです。何と悲しいことでしょう!!ここまで格差社会が広がっています。せめて、旅行ぐらいは、たとえ高校生であっても、みな行かせてやりたいと心の痛みを覚えています。
5 視覚障害者にとっての格差
 障害者には、大きく四つに分けられます。知的、精神、内部、身体障害者です。身体障害者も、肢体不自由・聴覚障害者・視覚障害者・重複障害者です。これらをひとくくりにして、障害者雇用法があり、50人いる会社では、最低一人を雇用しなければならない法律があります。しかし、実態は、先に書いた障害者の雇用が優先されて視覚障害者の雇用率は極めて低いのです。
 視覚障害者の適職と言われていた、鍼灸・マッサージの免許取得者も、健常者が遥かに多くなりました。例えば、かつては、整形外科でのマッサージ師は、1万2千人働いていた時もありました。しかし、現在は2千人前後と激減しています。30年前の法律の改正によって、マッサージの保険点数が極端に低くなり、病院の経営が困難となり、大都市から徐々に消えて無くなりました。また、開業をしても、90年代前半の景気の良い時は、患者が沢山治療に来ていました。しかし、バブルがはじけてからは、鍼灸マッサージの治療院を訪れる患者も激減しています。介護保険の影響を受けて、車を運転する、鍼灸・マッサージ師が、訪問治療をするようになりました。
 そのような訳で、開業している視覚障害者も、厳しい生活状況にあります。視覚に障害のあることによる格差としか思えません。本来、国家試験をうけなければならないのに、無資格のまま、やれ○○式マッサージとかいって、私たちの職域が荒らされております。
 ここまで書いてみると、日本もアメリカと同様、「弱肉強食」の時代が、ますます進んでいることに気づきます。
 以下のような発言を、ある女性が言っています。安倍総理は、「輝く女性」というけれど、女性には、家では介護をしなさい。それでいて、外で働きなさい。これでは輝くところか、若者と同様、私たちを家庭内、外でも働けと、言っているだけではありませんか?専業主婦に対しても、扶養手当をカットしようとしています。しかし、専業主婦と言っても、子供たちの世話をして、両親の介護をしているのです。子育ては、最高の教育者と言います。遊んでいる訳ではないのです……。
 話を元に戻せば、やはり、正規採用の充実こそ近々の政策と思いますし、今後政府が改正しようとしている労働法ですが、3年は同じ所で仕事をできるけれど、その後は、雇用主と本人の契約次第というのは、非正規社員をますます増加する法律ではないかと思わずにはいられません。
 12月8日は、日米開戦の日、9日は障害者の日です。年をとれば、ほとんど全ての人が何らかの障害を持つことを認識していただきたいと願っております。次回は12月20日の予定です。



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