第22回 憲法改正について考える
昨年の12月16日に行われた衆議院選挙では、自民党が320議席を超える大勝利でした。安倍総理は、円安株高を、自分の手柄として「アベノミクス」という言葉で、予想を超えた経済効果を見せています。08年の大不況から脱出して、ほぼ5年前の経済状況になったようですが、国民の8割は、景気の良さを感じてはおりません。それよりも、ガソリン・灯油・小麦等の輸入品の高騰で、運送業・漁業・農家は悲鳴を上げていますが、マスコミはあまり取り上げておりません。安倍総理は、憲法の改正を、今回の夏に行う参議院選挙の争点にしようとしていますが、公明党が、平和と福祉を公約にかかげていることから、経済成長が主な争点で選挙にしようとしているのではないかと思います。各地方区での公明党からの自民党への支持票は少なくても2万票と言われていますし、動員力と運動員の働きは他の追随を許しません。そこで、この度は昨年からにぎわせている憲法の改正について、私の考えを書かせていただきます。
最も最近の調査によると、憲法96条の改正についてのアンケートですが、ザックリ言って、賛成30パーセント、反対30パーセント、分からないも30パーセント程度の様です。新聞によっては、改正反対が50パーセントのところもあれば、改正賛成が40パーセントのところもあるようです。これは、憲法の改正となると、国民の多くがなんとなく不安を感じるのではないでしょうか。
問題になっているのは、憲法96条です。国会で3分の2を、衆議院・参議院で可決し、国民投票にかけて過半数になれば、憲法改正が可能なのです。しかし、自民党は、それを国会の過半数で憲法を改正したいというのです。昨年の自民党圧勝の波に乗って、7月に行われる参議院でも3分の2をとって、一気に憲法を改正したいという強い願いが安倍さんにはあるし、その向こうには、憲法9条を変えて、自衛隊から国防軍にしたいという、強い意思を感じられます。私たちが中学・高校生の時の社会科の授業では、「日本国憲法は、世界に誇ることのできる平和主義・国民主権・基本的人権の尊重など、大変すばらしい憲法を戦後獲得しました。」と教えられました。ところが、自民党の公約では、憲法改正がかなり前から決定されていました。そしてさらに勢いを増して、日本国憲法は、戦争で負けて、アメリカの占領軍からの押し付け憲法である。こんなみっともない国の憲法はない!日本は独立国であるから、自主憲法にすべきだとの声が強くなりました。
私は、日本は68年間他国と戦争をしたことがないこと自体が、憲法が歯止になり、アジアの人たちも、日本が侵略戦争を反省していると思うのです。例え、GHQの指導の下に定められた憲法であっても、日本の国会で決議され、発布された憲法ですから、責任は私たちの国「日本」にある訳であって、アメリカの責任ではないはずと思います。アメリカ側に言わせれば、私たちのお陰で平和が守られているのではないか。それをみっともない憲法、くだらないというのか、感謝こそされ、そんなふうに言われたくないね!と、言いたい気持ちではないかと思います。
それでは、憲法を改正してどうしようというのでしょうか。まさか、アメリカと戦争をしようという訳でもありませんし、それどころか、アメリカに日米安保によって、日本が守られているのです。この安保条約を撤回して、日本だけで独立して行こうというのでしょうか。そのような気配も、主張も聞きません。むしろ、憲法を改正して国防軍となり、アメリカと一緒になって戦争ができるようにしたいのではないでしょうか。日米安保条約を直ちに止めて、独立しての日本外交を進めようとしているのは、日本共産党です。ここに、大きな矛盾があります。そもそも憲法と法律の考え方は全く違うと思うのです。憲法とは、国民が主権者ですから、政府・国家の暴走の歯止めとなるべきものと思います、それを過半数によって決めるとなると、政権が変わる度に憲法が改正されてしまう危険性がでてしまいます。
実は、日本は憲法9条を拡大解釈して、もうすでに3回も、自衛隊が海外へPKOと言いながら、重機を持って、イラクへ派兵しました。アメリカは、イラクのサダム・フセイン大統領は、「大量破壊兵器」つまり核兵器を準備しているとの、推論の基に、2003年3月20日にイラク攻撃を開始しました。小泉内閣は、イラク特措法を提案し、強引に国会で可決しました。そして、自衛隊は、身を守るために、機関銃などを装備して出かけて行きました。病院を作ったり、橋をかけたり、地元の人たちと自衛隊は大変良い関係を結んでやがて帰国しました。憲法9条から言えば、これは憲法違反に当たりますが、国を助けるのだから良いだろうと、マスコミは、概ね支持していました。国会の答弁で、小泉総理は、イラクに大量破壊兵器が本当にあるのか?という質問に対して、「私は総理です。私が大量破壊兵器があるというのだからあるのですよ。」と、豪語していました。しかし、サダム・フセインが、アメリカの総攻撃によって逮捕され、裁判にかけられて、死刑を受けましたが、核兵器はどこにも見当たりませんでした。
この点について、アメリカ大統領ジョージ・ブッシュは、フセイン大統領を捕まえたことが勝利だといって、大量破壊兵器のことは、何も言わなくなったという経緯がありました。そして、10年間続いたイラクでの、戦争でアメリカが使った経費は100兆円となりました。イラクでは、アメリカ兵が4千人亡くなり、イラクの市民は10万人亡くなったと聞いています。その他にも、イラクから帰国したアメリカ兵の中には、傷病兵が5万人にも達しました。そればかりか、心的外傷後ストレス障害になり、自殺をしたり、いきなり家族に乱射したりの事件も耐えませんでした。絶えず死の恐怖と戦っていた彼らには本当に辛いイラクでの戦争でした。また、イラク戦争にお付き合いをしたイギリスの首相ブレアーは、国会で責任を問われ続けられました。論理的な文化をもつ欧米では当然なのですが、日本では、曖昧な文化ですから、「終わりよければ全て良し」とばかり、それで終わりでした。
ニュースではあまり取り上げられませんでしたが、自衛隊の中にも、イラクから帰国して、25人が自殺をしました。この自殺をした自衛隊の責任は、どこにあるのでしょうか。本人でしょうか。派遣を命じた小泉内閣ではありませんか?いいえ、絶対反対と国民が立ち上がらなかったのですから、私たちにも責任があると思います。黙っていること(サイレント・マジョリティー)は賛成していることになるのが日本の文化です。心の病に苦しみ自衛隊を退職した人もいました。また、乱射事件も何件かおきました。映画アカデミーショーを受賞した The Hurt lockerは、イラクでの苦悩するアメリカ兵と、テロリストの戦いが描かれていました。ハート・ロッカーとは、アメリカ兵の間では、「棺おけ」の異味を表し、自分たちは、棺おけで帰国したくないとの気持ちが込められていました。10年間続いたイラク戦争も、アメリカとしては解決したと決めたいのですが、イラク国内では、現在も宗派の戦い、スンニー派とシーア派が泥沼の戦いを続けています。アフガニスタンでも同様です。
日本の憲法では、外国での戦争には行かない、自国が攻められたならば、自国を守るということになっています。これ以外に何をすると言うのでしょうか?先にも書きましたが、みっともない憲法などと自虐・揶揄よりも、わが国が68年間全く戦火を交えないことが、立派な証ではないかと思います。そして、どこの国もできることならば戦争をしたくないと思っているのです。自分の国が苦しく大変になればなるほど、ミサイルを他国に売りつけて、国を潤したいと思っているのだと思います。
シリアでの戦いも2年を過ぎましたが、悲惨を極めています。150万人が、トルコ・レバノン・ヨルダンへ難民として逃れています。シリア国内では、地下に家を作っての生活をしています。2年間で死者が8万人に達しました。食べ物と医療が不足していると訴えています。そんな中に、イランの過激派、シーア派のヒズボラがシリアに潜入し、革命軍と共にアサド政府と戦いを始めました。イスラエルもイランの核兵器には神経質になり、シリアを攻撃しました。中東はマスマス混乱状態です。
話を日本に戻します。09年の衆議院選挙で、政権交代となり、鳩山総理は沖縄の米軍基地を県外移設と言いました。沖縄の人たちは、大きな希望が与えられました。しかし、何の交渉や根回しもなく、鳩山さんは辞任しました。菅総理は、東日本大震災と福島原発問題で「イライラ菅」(いらかん)といわれていましたが、おまけに消費税値上げ、TPPのことをぶち上げ、3年前の参議院で敗北しました。野田総理は、書くまでもない失態で大敗北。これは民主党は、平家が富士川の合戦で自滅したような気がしてなりません。安倍総理を筆頭に、今は、源頼朝の時でしょうか。そして、中国から、元が尖閣列島の方に、攻めてきているではありませんか。維新の会代表・橋下さんは、平家を倒そうとして立ち上がった朝日将軍・木曾義仲に思えてしまいます。
ではどうしたら良いでしょうか、日本は戦いに向かうのではなくて、平和を作り出すためにもっと外交面で、さらなる努力をすべきだと思います。今は戦争をしなくても、日本を倒すことは簡単にできることが明確になりました。村上龍著「オールドテロリスト」では、原発の二つか三つを狙ってミサイルを飛ばせば、日本には、誰も住めなくなるというのです。正に、こちらの原発の方をしっかりと守らなければ、安心・安全の国になることができないと私は思うのです。憲法を改正するよりも、原発の問題から逃げて欲しくないのです。福島の16万人が、故郷に住むことができないのです。原発によって、すでに日本は荒廃してしまっています。津波で命を奪われた2万人の命を無駄にしてはならないと思いますし、32万人の人たちが、家族が離れ離れになり、途方にくれています。安倍さんが絶好調だからといって、日本が絶好調ではないのです。国民の苦しみ、悩みを共有することが、総理大臣としての責務ではないでしょうか。1兆2800億円が、災害復興税の目的外に使用されているということ、責任は誰にありますか。
私は次のようなことを考えます。朝起きて、寝るまでに、食べ物で純日本製のものがいったいどれだけあるだろうか?パン・コーヒー・納豆・魚・肉・野菜…、自給率は40パーセント、つまり日本人口の3人に1人分しか生きて生けないのです。アジア・アフリカからの輸入品です。特に最も多いのが中国からではないでしょうか。家電製品にしてもmade in Japanはもう少数となりました。原材料の原油、レアアース、これらほとんどが輸入品です。マスコミの報道に注視することは大切ですが、全てを丸ごと信じるわけには行きません。マスコミは、バスに乗り遅れないこと、国民をリードすることを絶えず念頭においていると思います。私たち一人ひとりが、良く考えて、決断をする参議院選挙は2ヶ月後に近づいて来ています。前回の衆議院選挙のように、投票率が極めて低く、史上最低にしないで、誰がやっても同じだよではなくて、これからの政治は国民の責任と自覚であることを肝に命じて、望みたいと願います。特に、最も苦しんでいる20代から30代の人たちに、良く知って、良く判断して投票して欲しいと思います。投票率が高ければ、より正常な結果が生まれると信じたいものです。
気が付いたら、「この道はいつか来た道」とならないように!
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