第26回 歴史の認識を考える




 皆様、こんにちは。1週間があっと言う間に過ぎてしまいました。6月も下旬に入ります。この頃になると、私は沖縄での太平洋戦争の激戦を毎年のように思い起こします。そこで今回は、昨年よりマスコミを中心に問題になっている、「歴史の認識の違いだ」という、隣国と日本の政府のあり方について、私の考えを書かせていただき、読者の皆様の異論、反論をホームページに投稿していただけましたら感謝です。
 6月23日は、沖縄が激戦の末、陥落した日です、死者19万人です(県民が10万人、軍関係者が9万人)。しかし、その後、病気や飢餓等で5万人が亡くなり、最近のニュースでは、死者24万人と言われています。県民の4人に1人が犠牲になりました。若き看護師たちの「ひめゆり隊」は、6月18日に組織され、ほぼ全員亡くなりました。
 今回の観点は、領土問題と従軍慰安婦の問題について、そして戦争に対する認識の違いの3点に絞りたいと思います。
1 領土問題について
 これは、長年に渡り、日本はロシアとの北方領土問題、韓国とは島根県にある「竹島」の問題、そして、中国とは尖閣列島問題があります。
 本論に入る前に、ある政治学者が次のように言いました。「歴史を見れば分かりますが、戦争をして負けた国は、そもそも負けたのですから何も言えないのです。ヨーロッパにおける長い戦争にしても、戦いで敗れれば、全てなすがままということになります。ですから、日本はソ連に戦争で北方四島を取られたのですから、返せといっても無理なことなのです。」と、言っていました。
 さて、そのような考えを土台にすると、領土の問題も、戦争があらゆる出来事の基準に考えなければなりません。ロシアが何故に、北方領土を返還しても良いようなことを持ち出すかと言いますと、シベリアに眠る限りない油田、ガス等の採掘、さらには、資源を利用しての技術、生産の拡張を願うからであります。ロシアにとってメリットがなければ、領土返還の話は出てこないと思います。日露平和条約を結んで、シベリア開発をしたいとの強い願いが感じられます。
 竹島についての韓国との領土争いは、右傾化する日本の政治に対しての韓国側の反発に他なりません。総理大臣の靖国神社参拝も起因していると思います。とにかく日本は、韓国を1910年から45年までを侵略、併合しました。そして、全国民に日本語の使用を強制し、神社参拝を強制したことを、私たちは忘れてはならないと思います。彼らの屈辱、恨みは骨の髄にしみこんでいるのではないでしょうか。私たち日本人が、今日から日本語を話してはならない、全て英語で話さなければならないとなったらどうでしょうか。そして、日本国民全員が教会での礼拝を、40年も強制されたらどうでしょうか。
 次は、中国と日本の関係ですが、1894年の日清戦争以来、日本は中国を侵略し続けました。そして、日本の傀儡政権ともいう満州国を創立してしまいました。尖閣列島について、1978年に、日中友好平和条約が締結されました。その6年前に、田中角栄総理が中国を訪問し、会談を行い「尖閣列島はどうしましょうか」と言った時に、中国の首相・周恩来は、「それは今後の時代の人たちの英知ある判断に委ねましょう。」と、言ったと聞いております。それが、昨年になって、石原東京都知事が、「尖閣列島はもともと日本のものであるから、政府がやらないのなら、東京が買い上げるぞ。」と言い始め、あわてた野田総理が、持ち主から買い上げて「国有化宣言」をしました。これで問題がさらに、中国を刺激して行きました。その後、総理になった安部総理が、極端な高姿勢をとって、右への旋回を続けています。憲法改正、自衛隊の国防軍、靖国神社参拝等、次々と持論を展開して来ています。72年のトップ会談「当分は棚に上げておく」ということは、先人の指導者たちは、このようなことを想定していたとは思えません。平和的に解決することを願っての日中友好平和条約であったと思います。
 この領土問題は、歴史的な問題と共に、国と国との関係が良好であるかどうかにも大きく影響していると思います。アメリカが68年に小笠原諸島、72年に沖縄を日本に返還する義務はありませんでした。アメリカの将来を見通しての戦略上の判断でありましたし、その時の機密文書の存在が数年前に亡くなった元外務省官僚の告白によって、明らかにされました。つまり、沖縄を返還する時に、日本政府がアメリカに賠償金を支払い、米軍のために、手厚い保護の予算を約束したということです。それは、政府がそれまで、そんなことは決してないと否定し続けて来たということです。戦争に敗れた日本には、もはや何もいう権利はないのです。ポツダム宣言を受諾したからです。しかし、時代と共に、国家間の友好関係が進めば、状況が改善もするし、悪化すれば戦争だっておきかねないということではないでしょうか。私たちにおきかえれば、隣の家の人との土地の問題、境界線、僅かの違いでも殺人事件がおきるのですから、国家間となれば、領土の問題で戦争がおきかねないのです。インドとパキスタンのカシミールにしても、領土問題です。
2 従軍慰安婦について
 これは、最近の現代社会という教科書にも一部取り上げられるようになりました。民主党の政権交代も影響を与えているかと思いますが、教科書が政治の影響をもろに受けております。
 最近の安部総理、橋下維新の会代表の失言、暴言によって、韓国の強い批判を浴びています。このことについては、アメリカでのメディアでも強い興味を示し、かなりの期間ニュースで取り上げていました。アメリカでは、安部総理と橋下代表は国家主義者として取り上げています。過去の歴史を否定し、国益の名の下に、歴史を歪曲しているとの批判です。慰安婦の問題を「どこの国でもあったことだ」と言い逃れしています。これは、どこの国もそうだから日本の慰安婦の問題もたいしたことではないよ。韓国は、どうして、いつまでもこだわっているのだ!との、挑発的発言と思います。決定的な発言は、韓国の女性を強制的に慰安婦にした資料は見当たらないでした。そんなことは、私にも簡単に分かります。日本軍は、戦争中も、戦後も、自国の不利になる全ての書類を破棄したに相違ありません。責任をあいまいにして、回避するのが、過去も現在も、日本の政治、スポーツ、教育、文化ともいえるからです。その暴言に怒った、元慰安婦が証言し始めたのです。これは以前からも絶えずあり、私は、そのような集会で、慰安婦として、強制連行され、東南アジアへ連れて行かれたという、涙ながらの告発を聞いたことがあります。過去の史料がないから、従軍慰安婦もなかったということにはなりません。日本に関わらず、国益にならないことは、どこの国でも隠蔽してしまうものです。日本人の女性の多くが、戦争中、からゆきさんとして、インドネシアをはじめ、東南アジアに行きました。また、1944年には、日本中の犬、猫を供出させるという出来事もありました。史料はないかと思いますが、当時の体験者からの告白によって明らかにされました。犬、猫の毛皮は、外国に行っていた兵隊さんたちのコート、手袋、えり巻き等に使われました。
 今アメリカで話題になっているニュースがあります。それは連合軍、特にアメリカ軍ですが、ドイツ軍との戦いに勝利し、フランスに凱旋しました。その時に、米兵の多くが、フランス人女性に暴行をくわえたというのです。フランスの女性は沈黙を守っていましたが、アメリカの方から、ニュースの検証として、レポートが出されました。さらに、ドイツが連合軍に敗れた時は、ドイツの女性たち、約10万人が被害を受けたと、最近の文芸春秋に掲載されていました。しかし、ドイツの女性たちは、硬く口を閉ざしてそのことを話しませんでした。私の結論としては、被害者から訴えられれば、たとえ政府間で話し合いがついたとしても、謝罪の気持ちは、誰が総理になっても変説してはならないということです。
3 戦争についての認識
 6雑23日、先にも書いたように沖縄がアメリカ軍との激戦の結果陥落しました。このことについても、日本軍は、自ら命を絶つことを指導していないということをとなえる話があります。このことが、沖縄の人たちの心をどれだけ傷つけているか分かりません。沖縄は、日本から見捨てられたとの心は、いまだに米軍基地問題、オスプレイ問題等、一向に改善されていません。人間の歴史は、争いの歴史、戦争の歴史といっても過言ではばいといわざるをえません。世界中で、全く戦争がなかったという時はないくらいではないかと思います。
 ここで日本国の戦争に取り組んだ話の一面を理解する本を2冊ご紹介いたします。
 一冊目は森村誠一著「悪魔の飽食」です。
 70年代にベストセラーになりましたので、60歳以上の方は読んだ方も多いことと思います。中国における日本軍の中の特殊部隊「731部隊」です。詳しくは書きませんが、この特殊部隊が中国兵、ソ連兵、ポーランドの捕虜等に人体実験を行いました。例えばコレラ、ペスト菌等を注射して、人間が死ぬまでの経過を細かく記録に留めたというのです(これも一説には捏造といわれていますが)。その本には、匿名でのレポートが記載されており、25歳ごろに読んだ私は、身震いがしました。何と人間は残酷なものかと思いました。この決着は、アメリカ軍が、731部隊の記録を米軍に引き渡すこと、その代わり、日本軍の行った行為を不問にするとの取引でした。
 もう1冊は遠藤周作著「海と毒薬」です。
 戦争中、九州大学の医学部では、アメリカ兵捕虜に対して、731部隊と同じような人体実験を行って、人はどの程度まで生きられるかについての実験を行ったという話です。軍からの命令は天皇の命令であり、絶対でした。ですから、日本人は、それを正義と信じて戦ったのではないでしょうか。大虐殺の歴史はとどまることを知りません。第2次世界大戦で、日本人の310万人が命を亡くしたと言われています。その内の、80万人が空襲などで亡くなった一般市民でした。私の父の弟もその一人でしたし、50代・60代の人の親戚の中には一人や二人はいると思います。それでは日本軍が、外国において命を奪った数はどれだけでしょうか。加害者日本としては、あまりニュースになりませんが、2千万人と言われております。ナチスがユダヤ人を虐殺した数は、6百万人と言います。その他、戦争での虐殺はさらに多いと思います。
 ここまで、今回は、戦争にまつわる否定的な事実を挙げて書いて来ました。歴史の認識にも、明暗が必ずあると思います。ここにその一つを紹介いたします。
 10年程前に私たちの教会では、神奈川県川崎にある、在日韓国人の牧師を招いて、戦争中の話を聞かせていただきました。その牧師は、「私は日本に対して悪い気持ちは全くもっていません。戦争中も、中村先生という牧師から本当に優しくしていただいたのです。ですから、日本に残って、在日韓国人のために、教会で奉仕する決心をしたのです。」とのお話でした。戦争中、私たちが朝鮮人に対して、強制連行をして、徴兵制をしいたり、強制労働をさせたことは事実です。栃木県の宇都宮市大谷では、大谷石という、とても良質の石がありますが、そこで多くの朝鮮から強制的に連れてこられた人たちが働き、命を落としたと聞いています。そのような時代に、僅かな人かも知れませんが、心温かく隣人として接した人の話を聞くことができて、私は、人間の良心がある限り、平和を求めて訴えていくことの大切さを学びました。
 歴史の認識とは、独りよがりの価値観によらず、過去の事実を学ぶこと、関心をもつことから始まると思います。安部総理、橋下代表にも、先に書いた2冊の本を読んで欲しいと思うくらいです。
 「肩書きは、自己弁護士と書き換えた」(時事川柳より)
★メモ★
 今アメリカでは、drawn(ドローン)という無人操縦機がロケットを使っての攻撃をしています。これは、アメリカの砂漠地帯、ネバダ州にあります。コンピューターを操作して、世界のいたるところへ、爆弾を搭載した人工ミサイルを飛ばして攻撃するのです。例えば、オサマビンラディンが、パキスタンの街中に隠れていた時、アメリカは無人ミサイルを飛ばして、空から攻撃をして、ラディンとその家族を殺害しました。アフガニスタンやイラクでも、テロリストと思える人が歩いている所を、画面で見つけるとコンピューターを操作し、空から攻撃しています。問題なのは、その周辺にいた人たちも巻き添えになることです。ある青年が、コンピュータを使ってアフガニスタンのテロリストを、人工ミサイルを使って攻撃しました。彼がいるのはアメリカの1室です。狙いは10人でしたが、亡くなった人は100人となりました。その青年が軍を退役するとき、「君は良く働いた」と、勲章をもらいました。それには、あなたが殺害した人は、1268人と書いてありました。無人ミサイル攻撃での死者が1268人だったのです。しかし実際に攻撃したかったテロリストは100人程度でした。画面を通しての攻撃ですから、本人には実感があまりありませんが、尊い命は間違いなく奪われました。その後、彼はPTSDで苦しみ、悩んでいるとのことです。アメリカには、この無人ミサイルが現在7千機あるとのことです。これからの戦争は、これが主流となるのではないかと懸念されています。シリアでは、サリンという猛毒化学兵器が使われて、150人の人が亡くなっています。私たちに求められていること、それは「平和を作り出すこと」ではないでしょうか。これが私の歴史への認識です。



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