初志貫徹3月




  弥生3月、皆様お元気ですか?今月は、卒業の月です。栃木県では、一日に県内の多くの高校では卒業式が行われました。我が家の娘は、三日に卒業式を無事迎えて、めでたく卒業しました。3年間といいますが、過ぎてしまえば早いものです。里子として、3年間お預かりしましたが、楽しい3年間でした。時には、言い合いもありましたが、それによって、お互いに理解しあう良い時となりました。3年間、無遅刻無欠席で良く頑張ったと思います。彼女は、3月8日に我が家から那須塩原市にある、税理事務所に就職をします。不安もあるかと思いますが、初のアパートでの一人暮らしを楽しみにして、ルンルン気分のようです。自由への大いなる開放化と思います。そういえば、私も大学の4年間、不安と共に楽しかった青春時代を昨日のように思い出します。
 盲学校では、10日に卒業式がありますね。11日が高校入試の結果発表、16日が、私の行っている教会の清愛幼稚園、18日が、宇都宮市内の小学校の卒業式です。幸おおかれと祈ります。
 さて、今年も3月11日は金曜日です。5年前と丁度カレンダーが同じです。2時
46分の5年前の恐ろしかった時のことがよみがえります。
 私の従兄弟が、宮城県石巻にある、ソニーで仕事をしていましたが、あの時の津波によって、会社が飲み込まれてしまいました。従業員は、とっさの判断で事なきを得ました。家族は、家にいなかったので、九死に一生を得ました。17万人を超える人たちが、県外で生活しています。まさに「疎開」のような状態ではないかと思います。そんなおり、先ごろ東京電力は、5年後、あの時はメルトダウンが生じていたと、寝ぼけたような発表を今頃しているのです。三日後にはメルトダウンという言葉が、マスコミの一部から出ていましたが、当事者からの発表が5年後とは……、新潟県知事の言われるとおり「隠蔽」だと私も思います。5年が過ぎれば、責任が問われないと判断しての発表ではないでしょうか?
 栃木県内にも、1万4千トンの放射能汚染廃棄物が、あちこちに、ビニール袋につめられて山積みになっています。どこに埋めようかと政府は提案をしますが、すべて候補地では反対です。もはや、福島県の人が住むことのできない、原発地に、深く掘って埋め立てるしか方法がないのではないかと思います。
 この時期になると、マスコミから特集として報道されています。今回、私が心を強
く打たれたのは次のような話です。
 福島県浪江町に、吉沢さんという方が住んでいます。吉沢さんは、330頭の牛を飼っています。原発事故がおきて、人々は町を離れました。しかし、吉沢さんは、生きている牛を見捨てて、町を離れるわけにはいかな
いと、決心をします。そして、5年間、牛を飼い続けています。牛が食べる草等は、放射能で汚染された物を、無料でもらってきます。栃木、茨城、群馬等から、トラックで運びます。食べ物は無料でも、輸送費は、年間1千万円だそうです。全国に協力を訴えてまかなっているというのです。吉沢さんはいいました。「この牛は放射能で汚染されていますから、食べることはできません。しかし、現に生きているのです。福島の人たちも生きなければなりません。当初、私には絶望だけがありました。でも、現実を知って欲しい!忘れないで欲しい!原発がいったいなにをしているかということを、一人でも多くの人たちに知って欲しいのです。」と、力を込めて話していました。
 希望の牧場というそうです。絶望のままで終わらせてたまるものか!希望に変えて生きて行きたい。そのために、330頭の牛と一緒に生きて行くのだ!吉沢さんのこの言葉に私の心は熱くなりました。
 私の今月の読書ノートから
1 西加奈子著「サラバ」上下巻
 昨年の直木賞です。この本は、主人公、垰歩(あくつあゆむ)の幼少期から、34歳までの人生ドラマです。漢字は違いますが、何といっても、垰(あくつ)などと、小説ではおめにかかることのない名前がいきなり出て来ましたので、ビックリでした。
 本題ですが、この本は、主人公・歩の家族をめぐっての様々な人生ドラマが展開します。著者は、イランで生まれ、エジプトでも生活をしていたので、その辺の話が実に興味深く感じられました。歩と姉の貴子を中心に、自分とは何者か?人生とは?信じるとは?生きるとは?愛するとは?……?著者の豊かな感性で書かれた素晴らしい本だと感銘を受けました。それに加えて、イスラム教・ユダヤ教・キリスト教についても書かれており、人間にとって、宗教とは何かを問いかけています。男女の心の中にある、デリケートで深い心の動きが描写されていました。特に、エジプトの人たちの国民性について書かれてあるのがとても印象的でした。

 そういえば、ロサンゼルスオリンピックだったかと記憶しています。山下選手が柔道の決勝戦で対戦した相手がエジプトの選手でした。山下さんは、右側の足を怪我していたのです。しかし、エジプトの選手は、その足を攻撃しなかったのでした。インタビューでは、「どうして山下さんの右足を攻めなかったのですか?」との問いに、そのエジプトの選手は、「怪我をしている足を攻めて私が勝ったとして、いったいそれが何の意味になりますか。正々堂々と勝負をして勝つこと、それがオリンピック、柔道の精神ではありませんか?」との答えを思い出します。遥かアフリカのエジプトですが、この本によって、私の心はぐっと近くなりました。興味のある方には是非ご一読いただきたいと思います。
 サラバとは、何に対してさらばなのでしょうか?あなたにとって、私にとって、さらばとは何でしょうか?
2 田原総一朗著「塀の上を走れ」(自伝)
 1934年(昭和9年)生まれの田原さんの人生旅日記です。83歳になる田原さん、健在で、戦前・戦中・戦後、今日にいたるまでの社会と政治を鋭く切り裂いて見せてくれます。今でも、「メディアが、権力を持つ政権にブレてはならない、総理と飯を一緒に食べるような、新聞社はだめだ。」と指摘します。
 東京12チャンネルを立ち上げた時の話、朝まで生テレビの話、政財界の裏話も書いてあります。それに加えて、自らの心ゆれた人生をありのままに書いています。懺
悔の人生日記も書いてあります。田原さんの勇気に敬服します。今から3年前に書き下ろされた本ですので、大変感動しました。
3 半藤一利著「日本の一番長い日 決定版」(文芸春秋社)
 同名の作品が映画になりました。私は最初、レンタルビデオで、鑑賞しましたが、良く分からないところが多かったので、本をデイジー図書(録音図書)で楽しみました。
 1945年8月14日から15日までの24時間を、事細かに調べてまとめてありました。昭和史では知ることのできないことが具体的に書いてあります。
 14日の日から、御前会議が何度となくもたれ、内閣は紛糾します。陸軍大臣を含め、和戦賛否に分かれてなかなか結論が出ません。陸軍では、ポツダム宣言を、無条件降伏とはとらず、単なる警告程度に理解する人もいたというのです。最終的には、昭和天皇の裁断によって決定されます。
 この話は、今までにも本になり、報道されています。しかし、この本では、14日の夜から15日にかけて、陸軍の近衛兵たちによって、宮殿が選挙され、二・二六事件のような、クーデターが起きていました。天皇も場合によっては、沖縄に送られてしまうかも知れない危険な状態にありました。
 また、15日に放送されることになっていた、玉音放送も、反乱軍によって、奪い取られそうな危機にもあいました。宮殿の中は、一触即発状態にありました。
 7年前に出版された本ですが、日本人のどれだけの人たちが読んでいるだろうか?映画では、真のところは理解されないのではないかと正直痛感いたしました。
 さて、最後に東日本大震災に関係する資料をここに紹介いたします。被災地域が南北500キロ、東西役200キロに渡る広範囲なものでした。地震・津波・原発による放射能汚染という、多重被害となりました。津波などによる死者数は、1万5894名、行方不明者数・2563名(1月8日現在)、震災関連死者数3407名(2015年9月現在)、避難者数役17万8千名(1月29日現在)、月刊誌信仰による。 
 私が、特に心を痛めるのは、3407人の関連死の内、1979人が、福島県から亡くなっているということです。病のため、自ら命を手にかけた人、そして殺人事件もあるのです。もし、私がそこにいたらどうなっていただろうか?と、この日が来ると改めて考えます。そして、人の命は、生かされている今日であることを痛感しています。
 ところで、今年の冬は「暖冬でした」と、気象予報士の森田さんが訂正をしましたが、5年前のあの日のように寒い今週となりました。
 次回は、4月15日の頃に書きます。






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