初志貫徹6月号
「空気を読むとは?」



 皆様、こんにちは。お元気ですか?6月5日から関東地方も入梅と聞きました。毎年のように、日本のあちこちで豪雨のために、土砂崩れがおきて、多くの犠牲者と被害に遭うようになってしまいました。昨年は、栃木県から茨城県にかけて、鬼怒川が大氾濫し、特に茨城県常総市を中心に大被害が起きてしまいました。川の堤防を越えて、天井まで水が入ったと聞くだけで恐ろしくなります。また、熊本県の土砂崩れが心配されます。今年は、何事も起こらないようにと願うばかりです。
 さて、今回のテーマは「空気」についてです。数年前、KYという言葉が流行しました。その場の雰囲気を読み取れず、場違いなことを言うと、「空気が読めないのか?」と、職場やマスコミでも良く耳にしました。現在は、それほど流行とは言えませんが、日本の文化を支配しているように私には感じます。
1 歴史的に空気を読んでの判断について
 このことについては、数限りなく思い起こされます。今回は、二つの例を書きます。
 一つは、江戸幕府が崩壊し、薩摩長州連合に加えて、土佐肥前が連合をして、明治維新を起こしました。あの時に、「今は空気を読んで、お家大事」と、徳川幕府の時の「普代」の大名たちが、徳川から離れてしまいました。代表的なのは、彦根藩(現在の滋賀県)の井伊藩でした。300年に渡って、徳川の筆頭家老というべき井伊藩が、薩長と戦いませんでした。
 それは、時代の空気だから、ここはしかたないと言う、大半の考えだったと聞いております。「今はそんな時代ではなくなりました。」も、空気のことを指しています。つまり、負ける戦をしてもつまらないとの「合理的、お家保身」でした。他方、会津藩は、八重の桜の大河ドラマでも聞きましたが、「ならぬはならぬ」で、松平家は、最後まで戦いました。
 第2の空気は、田原総一郎著「塀の上を走れ」の本の中で、田原氏の結論は、「あの太平洋戦争がなぜ起きたか?私には、空気だったからとしか言いようがありません。」とありました。私は、それを読んで愕然としました。確かに軍部の暴走を止めるのは極めて難しかったかも知れません。 しかし、それでは、日本人には判断とか、責任がないのでしょうか?あの時は、あれしかなかったのだ!社会の空気がそういう状況だったからでは、あまりにも無責任すぎるではありませんか。
 確かに、そう言われれば、原発は、絶対安心の神話となっていました。2011年の東日本大震災の時も、「空気」とは言いませんでしたが、「想定外」でした。そして、東京電力は、あれから5年過ぎた今年、メルトダウンがあの時、起きましたと発表しました。まるで、想定外といえば、すべて良い訳になるとでもいうのでしょうか?
 それと同じように、戦争も、みんなの気分、当時の空気で、反対もなかなかできなかったのだ!と、言うことにしてしまうのでしょうか?それでは、戦争で若い命を亡くした人たち、原爆や沖縄で罪なき人たちの命は、なぜ失われなければならなかったのでしょうか?物事には、原因と結果が必ずあると思います。得体の知れない「空気」などで、人の命が奪われ、戦争に突入するようなことになってはならないと思います。
  その点から述べますと、現在は、特に新聞とテレビが、政治に関して、特に政府に対しての批判を避けているように感じてなりません。舛添さんへのバッシングは、空気が認めているのでしょうか?一つの話題が起きると一斉にマスコミが追いかけるのです。
 では、次のニュースを皆様はどのように思いますか?
 安部総理が3年間で、海外へこれまでに聞いたこともないほど、数多く出かけて行きました。その金額は、880億円というのです。つい最近、行われた三重県伊勢市でのサミットですが、二日間使用したメディアセンターの建て替え費用は、22億円((19億円との話もあります)、そして、その二日間使ったセンターを二日で壊しましたが、その費用が3億円だったというのです。さらに、2万4千人の警察官を、警備のために動員しましたが、合計600億円だったというのです。
 まだあります。サミットには多くの来客がありました。新聞記者を含めてその数は4千人でした。その人たちに、「おもてなし」でしょうか?お一人様3万円のお土産がつきました。その中身ですが、国酒、日本各地のお菓子の詰め合わせ、熊本県産のボールペン等だったそうです。来客に差し上げるのはいざしらず、新聞やテレビの記者にまでやる必要はないと思います。彼らは、仕事で取材で行っているのではありませんか?このことについて、新聞社に問い合わせたところ、回答はありませんでした。そもそも、私が書いているニュースは、新聞・テレビではなくて、ラジオで話された、ある評論家の話から耳に入ったニュースです。海外から来た人たちへのお土産にしても、これほどのおもてなしは、日本だけではないのかと思います。他の国でのサミットのことも知りたいものです。
 このようなことがニュースにならないのは、マスメディアと政府の癒着が進んでいるのではないかと、私は疑念をもってしまいます。国民には知る権利が保証されているのではありませんか?知らせなければ何をやっても良いというのでは、国民主権を踏みにじっていると思うのです。
 こういうことに慣れてしまうと、「どうでもよいよ。任せておけばいいだろう」という、恐るべき空気に慣れてしまうから恐ろしいのです。今、できること、今、考えるべきことに、直視したいと私は思わずにはいられません。
 今、ペルーでは、大統領選挙が行われています。ペルーでは、選挙に行かないと、一人当たり、2600円の罰金が課せられるとのことです。オーストラリアも同様と聞いています。日本も導入してはどうでしょうか?投票率がグンと上がると思います。
2 私の読書ノート
 次に1冊の本の紹介をいたします。2年前に出版された、韓国の研究者パク・ユハさんが書いた「帝国の慰安婦」(朝日新聞社発行)という本です。長年に渡って、強制的な慰安婦はいなかったとの、日本政府からの声、村山総理の謝罪は出す必要がなかった。そのような不毛の議論がなされて来ましたし、今日もまだ続いています。
 帝国の慰安婦では、日本軍によって、強制的に慰安婦にされた、朝鮮国の女性たちの真実をまとめてある、優れた論文です。当時の様子を詳しくまとめた研究論文です。日本人の私たちは、是非読んべきではないかと思わずにはいられません。その中の、何点かをピックアップします。
 日本軍は、中国を侵略し、満州国を治めてから、中国全体を治める時に、朝鮮の人たちも、男性は兵士として、女性は慰安婦として、中国につれて行きました。そして、日本軍は、朝鮮の人たちを日本国民ということに同化したのです。1910年の韓国併合以来、朝鮮人も日本人なのだから日本語を話すようにと強制しました。
 中国においては、朝鮮の女性たち、5万、8万、10万と言われていますが、慰安所を建てて、日本兵の慰めの相手をさせられました。実際に慰安所を運営したのは、日本人、韓国人などの業者でした。親切な人もいれば、極悪な人もいました。強制労働、強制慰安婦のために連れ出したのは、軍ばかりではなく、多くの悪徳業者も関わっていたとのことです。
 さらに、日本軍は、「朝鮮人は、日本国民になったのだから、中国人、インドネシア人などよりも上なのだ。」と教え込みました。日本軍の東南アジア侵略にも、朝鮮の女性たちに着物を着せて、軍隊と南進して行きました。昼間は看護婦として働かせ、夜は慰安婦とさせられてしまいました。これは、まさに、江戸時代の身分制度を、海外にも輸出したことになります。
 いくつかの小説にも書いてありますが、朝鮮の女性たちの中には、男たちが戦争で命を捧げるのだから、私たちは体を捧げなければならないと、運命的に考える傾向がありました。その他、様々な心の葛藤が書かれてありますが、最後に私が最も驚いたことを書きます。
 1945年8月になって、ソ連が、日ソ不可侵条約を破り、中国に入って来ました。そして、日本兵10万人が、捕虜として、主にシベリアに連れて行かれました。その時に、韓国の女性たちも、日本人と同じだからということで、ソ連に連れて行かれたとありました。このことは全く知りませんでした。何万人という、韓国の女性たちも、日本兵と一緒にソ連に連れていかれて、日本軍よりも酷い扱いを受けて、ソ連で死んだ人が多いというのです。
 結論、戦争ほど罪深く残虐なものはない。今なお、世界のいたるところで、戦争が続いています。
 この筆者は、日本の戦争を起こした原因は、軍を使って、領土を侵略しようとする、帝国主義によるものだと述べています。さらに、自分の国こそ優れている、力と経済力があるという、優越思想、これこそ戦争へとかりたてていくものが、背景にあります。
 さらに、パク氏は、日本の実態は70年前の思想と変わっていないというのです。軍事力は使っていないけれど、経済力にものをいわせて、日本こそアジアで優れた国である。金の力が国力を表すという思想が、国全体を支配しているし、謝罪をする気持ちはないし、歴史を正当化するだけである。他国民の苦しみを理解しようとしないのではないか?そればかりか、沖縄の人たちが戦後、そして今日、どれだけアメリカの基地として苦しんでいるか、日本政府は理解しようとしていないではないかと、鋭く指摘しています。これに返す言葉はありません。
 ここまで書いてきて、私が強調したいことは、一人の国民として、私の空気とは、選挙に私の意志を投票することだということです。それを、どうでも良いですよ!では、私たちの権利をごみのように捨ててしまうことと思います。
 空気読む それより俺の 気持ち読め(時事川柳より)
 次回は7月15日を目標にします。


 






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