初志貫徹7月号
「ニュースに一言」



 皆様、暑い日が続いていますがお元気ですか?九州地方や東北地方では、大雨が降り続いています。しかし、関東地方は雨がほとんど降らず、梅雨だというのに、真夏を思わせる日が続き、ダムの水が底をつきそうです。これが梅雨知らずというのですね。まさに、そこが問題なのですね。「過ぎたるは、直及ばざるが如し」と、言わざるを得ません。
 さて、今回も最近のニュースをいくつか取り上げて、私の考えを書きたいと思います。あまりにも多くの大事件が立て続けて起きています。それを書いたら「長すぎるよ」との声が出て、読んでいただけなくなると困りますので、最も関心のあることを書くことにします。
 7月2日でしょうか?バングラディシュのレストランでは、ISのテロリストが突然乱入し、外国人の客を対象に、20人余りの人が殺害されました。日本人7人が、JICA(ジャイカ)のために、支援に行っていましたが、悲しいニュースになってしまいました。
 後日、わかったニュースでは、バングラディシュの警察官は、かなり前に犯人たちを取り逃がしていたというのです。さらにいえば、昨年の秋には、JICAのために、日本人二人が農業指導のために行っていましたが、バングラディシュで殺害されました。このことについては、日本の政府はノーコメント、マスコミも、私の知る限りでは、朝日新聞だけが、小さく記事にしていました。当時、ラジオでは全く放送されていませんでした。理由としては、バングラディシュの政府がIsと認めていなかった。認めると企業からの投資と観光客が来なくなるからです。せめて、日本の政府とマスメディアでは、日本人が殺害されたことについては報道すべきだったと思いますが、これまた、政府の「忖度」とやらで、政府が喜ばないニュースは流さなかったのでしょうか?今回のレストランでの乱射事件は、大きな衝撃を与えました。
 皆様、覚えていらっしゃいますか?3月には、チュニジアで、日本人3人の観光客を含めて沢山の人たちもISの犠牲になりました。バングラディシュでの乱射事件の翌日には、イラクでは、自爆テロによって、200人が亡くなり、数百人の人たちが重傷をおいました。アメリカの放送を聞いていると、毎日数十人、時には100人を超える市民が、アフガニスタン・シリアで、自爆テロによって殺されています。
 ISといいますが、本体は、イラクで米軍によって叩き潰され、サダム・フセインを中心とする、スンニ派の人たちが多数派で、イスラム国を立ち上げようとしているのです。そこへ、海外からの賛同者、それぞれの政府に不満と怒りをもっている「マイノリティー」の若者たちがぞくぞくと加わっているのです。2003年のイラク攻撃からすべてが始まり、現在の政権は、イランと同様「シーア派」が、政権を握っているのです。
 イギリスでは、この責任、つまり、イラクには大量兵器があると、ブッシュ大統領が宣言し、宣戦布告しました。すぐさまイギリスも攻撃に加わりました。この責任について、当時のブレヤー首相が13年前の責任を問われているのです。大量兵器はなかったではないか?それなのに、アメリカの話に乗って攻撃に加わったのは大きな誤りだったという責任追及と謝罪です。
 日本では、いくら国会で安倍総理にせまっても、それは当時の判断によるものでありました。との答弁で、「政府の判断が間違っていました。」とは、決して言わない、言い訳逃れ、無責任の政治体制です。あの時、小泉総理は国会で、「大量兵器は、私があると言っているのだからあります。」と、おおみえをきっていました。
 「あの時は想定外」で言い逃れをするのが日本の政治なのです。責任を取らない政治、前回書いた、空気だったとのいいわけなのでしょうか?かつての、武士社会では、友人・藩のために、切腹しての責任がありました。舛添さんばかりではなく、せこい政治家が増え、無責任の政治家が増えているのは情けないことと思います。昨年9月17日の、集団的自衛権に関する法案の時に、民主党・福山さんが、お前たちには「武士の情けがないのか!」との言葉を思い出します。
 さて、次に7月10日の参議院選挙について書きたいと思います。私の感想は、相変わらず選挙に行く人が少ないことが残念です。今回は、54%と前回より3%上がったといいますが、60%になって欲しいと思いました。私たち国民にとって、政府に意思表示ができるのは、選挙しかありません。「多数決」が民主主義の原則です。「最大多数の最大幸福」とは、ベンタムの言葉です。
 選挙に行かないのは、権利の放棄ですから、政治に対して白紙一任をしたと同じことになると言わざるをえません。1人区では、32人中11人が当選したのは、4野党が協力した結果だと思います。このことについて、安倍総理は、「これはアベノミクスが、国民に認められた結果です。」と語っていました。
 私はそうは思いません。北海道から東北地方での1人区では、自公党支持の当選者は秋田県だけでした。さらに沖縄県でも、大臣をしている人が落選し、福島県でも、法務大臣が落選しました。自民党から言えば、21勝11敗というかも知れませんが、二人の大臣が落選したことは、これまでに例がありません。敗れた21人にしても、接戦でした。選挙制度によって、1票でも多ければ勝ち、少なければ負けという制度によるものです。
 私の住む栃木県でも、おしくも破れましたが、80万票の内、31万秒を得ているのです。40%の支持を受けているのですから、惜敗だと思います。そのようなところがいたる所にあります。3年前に比べれば、一歩前進かと思います。3年後の参議院選挙で、真の方向性がでてくると思います。民進党だけでしたら、1人区は全敗していたかも知れません。
 衆議院選挙は、今年か来年に解散総選挙になるのではないかと思いますが、こちらも、バラバラでは安倍総理の思うままになってしまうと思います。かつては、自民党の中に、派閥があり、チェックがなされていたのです。しかし、反対すると、公認されないのでは?との、恐怖心から、反対であっても沈黙を保っているのが現状と思います。
 今回の選挙で、私がちょっと安心したのは、1人区では、公明党支持者の24%が、野党に投票したとあります。11人が当選したのもその一因になっていると思いますし、繰り返しになりますが、福島県・沖縄県では、現在の大臣が落選したことが、当事者の気持ちに応えてくれない政府への不信任の結果ではないかと思います。18勝14敗くらいが、まあ私の個人的な判定です。
 マスメディアは、憲法改正の3分の2を連呼しています。しかし、その3分の2とは、同じ考え方ではありません。公明党は、憲法9条については反対のはずです。そう簡単に3分の2で憲法改正案が通過するとは思いません。改正についても、党別にみんな違っていることぐらい、新聞社は比較検討してはどうでしょうか?そもそも、新聞社にしても、憲法改正に賛成の新聞もあれば、反対の新聞もあるではありませんか?冷静に政治のコラムを書かないと、大本営の放送に加担することになります。新聞とテレビには用注意と私は考えています。
 私の読書ノート 宮尾登美子著「蔵」
 この本は、1993年に、毎日新聞社に連載され、単行本となりました。私にとりまして、宮尾さんの本を読むのは初めてです。テレビドラマでは聞いたことがありますが、やはり読書をすると新たなる感動を受けます。主人公は、烈(れつ)という、失明女性です。実在の女性化と思って、最後まで聞きましたが、筆者は、これは実在の話ではありませんと、後書きで書いてあります。しかし、モデルになるような話はあったのではないかと私は感じました。
 所は新潟県。明治から昭和にかけての酒造りの話です。烈は、生まれた時から目が悪く、11歳の頃には、完全失明してしまいます。生まれたのは、1918年(大正7年)でした。医師は、「この子は、網膜色素変性症ですから、ゆくゆくは全盲になるでしょう。」との宣告を受けます。烈は、賢い子でしたので、6歳の時に、医師から言われても、目が悪くなることはおおよそ検討がつきました。
 烈の父親は、新潟県の大農家、222町歩で、沢山の小作人をかかえ、酒造りの2代目でした。この烈は、盲学校には行かないで、父親から家庭教育を受けます。母親が早く亡くなり、その妹・叔母の甲斐甲斐しい世話を受けて成長します。
 11歳で完全失明した列ですが、なんとしても、父親の酒造りを覚えたいという願いをもち、女性が酒造りをすることは禁物でしたが、男も女も酒造りをしてはならないとの決まりはないはずと、父親を粘り強く説得します。やがて烈は、父親を説得し、酒蔵に入ります。そして、若者との恋愛を経験するのです。
 時代背景、酒造りの詳細、実在する話ではないかと思わずにはいられない程の正確なストーリーになっています。
 宮尾さんは、以前ラジオでのインタビューで、「私は小説を書く時には、いいかげんなことは嫌いなので、徹底的に取材をするのです。」と、話していました。ですから、物語は、小説といっても、様々な調査と時代背景が正確に書かれてあります。それだけに、読者には、すべての登場人物が、リアルに感じられるのだと思います。
 作者は、後書きで、視覚障害者の女性の生き方を書いてみたいと、以前から強く願っていましたと、書いているように、視覚障害者の様子を大変正確に書いていると感じました。なんと言っても、大正から昭和にかけての生活の様子が良く分かり、遥か昔のこと、私が生まれる前のこと、丁度私の両親の青春時代の社会の習慣・考え方を知ることができて嬉しく感じました。
 宮尾さんは、先にも書きましたが、一人の人生「初志貫徹」を生きた人たちについて、多くの小説、しかも実在の人たちをテーマに書いたと聞いております。今年の私のテーマでもあるので、ここからは、宮尾登美子さんの本を、しばらく読んで、皆様にレポートしたいと思います。宮尾登美子さんは、1926年から2012年までの人です。昭和・平成を生きて、87歳の生涯をおくりました。
 7月31日には、都知事選挙、8月に入るとオリンピック、夏の高校野球と、スポーツの夏です。
 次号は、8月15日を予定しております。共に、真夏を乗り切りたいものです。ご健康をお祈りします。


 






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