2015年8月前半





 皆様、残暑お見舞い申し上げます。今年の夏は、当初の冷夏どころか、経験したことのない程の猛暑が続きました。如何お過ごしですか?毎年書いておりますが、「秋来ぬと 目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる」との短歌を思い出します。
 8月4日から5日にかけて、数年ぶりに東京に、日本盲人伝道協議会の総会に出席するために、山手線、新大久保から2キロ程の所にある、戸山サンライズに行って来ました。ミンミンゼミが、夏の到来を歌い上げていました。宇都宮では、ミンミンゼミの声はほとんど聞くことができません。そろそろ、ツウツクホウシの出番の頃ですね。
 そういえば、東京に出かけたのは6年前のことでした。山手線には、「ホームドア」というのでしょうか?電車がホームに入るまでは、線路に落ちないようにブロックされていました。私は初めて触れた経験でした。ニュースでは聞いていましたが、実に良いものですね。宇都宮駅にもあると良いのですが、乗降客の数が多くないとだめなのでしょうか?障害者・高齢者・全ての人たちにとって安心・安全と思います。
 また、東京からの帰りは池袋から湘南新宿ラインに乗りました。宇都宮行きでしたが、女性の車掌さんでした。若々しい声で、まるでアナウンサーではないかと思うほど、ハッキリした声で美しい声でした。もちろん、直接話はしませんが新規採用の車掌さんではないかなあ?と、思うほどでした。「頑張ってね」と、励ましてやりたい気持ちになりました。
 さて、今回はアメリカのラジオ、NPR.で私が聞いた、気になるニュースをご紹介いたします。7月末の放送で、日本で話題になっている集団的自衛権のニュースが取り上げられました。アメリカでも興味があるのですね。
 その放送の概略を書きますと、日本では安倍内閣に対して、憲法9条を養護する声が強いこと、そして日本は70年間戦争をしていないのだから、憲法に従って戦争はいやだとの声が強いと報道されました。「戦争は嫌だ、戦争反対」という国民の声が強い。それに対して安倍内閣は昨年の7月に、憲法9条の拡大解釈によって、アメリカと連携して自国およびアメリカのために戦おうという法律を衆議院で可決したというニュースでした。拡大解釈のことを、reinterpretation(リインタプリテイション)と言っておりました。私には英語の良い勉強です。
 その後に放送では、日本の人たちの言葉が理解できないようなコメントがありました。つまり、アメリカが日本を守り、日本がアメリカを守るとの条約がありますから相互の協力は当然ではないか?日本も平和を作り出すためには、アメリカと協力して戦うことも必要ではないか?とのコメントがありました。アメリカは、この70年間戦争の連続です、朝鮮戦争、ベトナム、アフガニスタン、イラク、その他宣戦布告をしない戦いも3回あります。彼らには、必要ならば戦争も当然なのです。日本の国民の考えを理解するのが、いまでは難しくなったのだな?と思わずにはいられませんでした。
 因みに、アメリカでは大統領の権力によって、War actという戦争を行う権力があるのです。大統領の命令で軍隊が行動を開始します。その後、議会での承認を受けるのです。日本のように国会の承認を受けなければならないことを、理解できないのかもしれません。イラクへ自衛隊がPKOで出かけたのは内閣で提案をして、特別措置法を国会での強行決議によるものですから、今回のように閣議決定をしてから法案を提出するというのは、極めて強引な手法と思います。
 徴兵制は絶対にありません。憲法が禁止しています。と総理が何度言っても今回のようなことがあるのですから、「絶対」という言葉は全く信頼できなくなりました。福島の原発を国民は知っているからです。政治の世界では、「絶対」はありえないと考えるようになりました。
 おまけに、「法律なんか、関係ないよ」との総理補佐官の発言にいたっては、それでは道路交通法も守らなくても良いのか?飲酒運転をしても良いのか?…となってしまいます。都合の悪いことに関しては、「関係ない」と言い出してしまっては、法治国家が崩壊してしまいます。教育基本法にしても、教師には政治や宗教を児童・生徒に強制してはならないとの法律があります。これも、関係ないと言ったら大変なことになりますね。
 いずれにしても、高校生、大学生が政治に対して関心をもち、戦争なんか嫌じゃん、と言って8月2日に5千人の高校生たちが立ち上がったことは大いに結構だと、私は支持しています。自分たちにやがて責任がかかって来るのですから。
 8月10日のNHKの報道によると、安倍内閣を支持する人は36%、支持しないが47%になりました。また、日本の平和憲法を守るべきとのアンケートが87%でした。集団的自衛権に対する反対派58%、支持する派9%です。国立競技場を白紙撤回した総理、集団的自衛権の法律を参議院で強行採決、または衆議院で60日が過ぎたからといっての再可決!これをしても、有名無実になると私は思います。テレビで自衛隊に入隊してください、とのコマーシャルが流れ始めました。私たちに選挙権があること、民主主義として私たちが考えて判断できることは、戦争中310万人の尊い犠牲があったからに他なりません。
 8月12日がやってきました。1985年8月12日、日航機・ジャンボジェット機747が、群馬県御巣鷹山に激突して、520人の命が一瞬にしてうばわれました。4人が奇跡的に助かりました。昨日のことのように思い出されますが、すでに30年が経ちます。私にとっては、大きなショックだったことをハッキリ思い出すことができます。人の命は、いつ・どうなるか分からないものだと心底教えられました。私は今日生きています。でも明日は分からないのだと、痛感しております。
 今月も、数冊の本を読みました。
1 ジョン・スタインベック「怒りの葡萄」
 40年ぶりに読みました。1930年代、アメリカのオクラホマからカリフォルニアまでの2千マイル(3200キロ)を10人の大家族が仕事を求めて移動します。農地を取り上げられての移住です。その頃から、もうすでに1日いくらの賃金制度になっておりました。カリフォルニアでは果樹園の作業、綿花を積む仕事、1時間5セントだったのが次の日には、2セント半になります。仕事を求めて何万人、何十万人と、カリフォルニアに押し寄せて来るので、地主たちは、賃金カットをするのです。ローコストを目指す日本の現在と変わらないのでは…と感じないではいられませんでした。
 この本のクライマックスは最終章です。大洪水が彼らを襲います。トラックを降りて1軒の納屋の中に避難します。そこには、痩せこけた少年と今にも息を引き取りそうな父親がいました。「父さんは死にそうです」との悲痛な声に、出産して直ぐに子どもを亡くしたローズは、家族を他所に追いやって、乳房を出してその死にかけている人に、乳を与えるというところで終わっています。
 どんなに貧しくても貧困にあえぐ、弱い人たちが助け合う、人間愛の美しさに心が打たれました。スタインベックは、ノーベル文学賞を受賞しております。まだ読んでいない方には、是非お勧めしたいと思います。
2 壺井栄著「二十四の瞳」
 これは、幾度となく映画にもなりました。できれば、読書をお勧めしたいと思います。壺井さんは、実は社会主義の信奉者であることを、後に知りました。しかしこの本は、小豆島での若い女教師と12人の子供たちの心温まる物語です。戦前戦中の話です。戦後70年と言われていますが、今年も私はこの本を味わいたいと思います。
3 立松和平著「人生のいちばん美しい場所で」
 この本は立松さんが亡くなる1年前に書かれましたので、最後に書かれた小説と思います。二人の男が、大企業での仕事を終えて退職します。さてこれからという時に二人には思いがけない試練がやって来ます。片山は、夫婦で海外へ旅行をしようとワクワクしていました。妻が一足先にアラスカに行きますが、突然の心筋梗塞で亡くなってしまいます。もう1人の奥井は会社人間で、ほとんど家にも帰れないほどの仕事の人生でした。ところが、妻・紀子に異変がおきます。アルツハイマーにかかるのです。奥井は退職して介護に入ります。社会とのいっさいの関係を絶っての人生になります。いままで夫婦とは名ばかりでした。奥井は全身全霊で妻と向き合います。
 夫婦とはなんだろう、愛するとはなんだろう?奥井の妻への献身的な人生に心をうたれました。それと共に、人生とは何と不確実なのか…。30年前の日航機墜落事故を思い起こしながらこの本を読みました。彼の大学時代、そして人生感、出身地の栃木県・塩原温泉・筑波山の風景画、私にも目に見えるような描写がありました。それにしても、翌年2010年の2月に突然62歳で病死したことは本当に残念なことでした。私より4歳上の作家です。
 ところで、今年は1880年以来の暑さだと聞いています。地球が悲鳴をあげているのではないでしょうか?海の中はプラスチックで汚染されています。私たち一人ひとりが、平和を考え環境を考え、日々、小さな努力を継続しなければならないと思っています。
 それでは、次回、8月29日にお会いしたいと思います。「馬鹿にすな 理解したから 反対だ」(時事川柳より)、「核は今 寝たふりしている 平和」(時事川柳より)。







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