2015年9月後半





 集団的自衛権を考える
 9月18日の深夜、参議院本会議では、ついに安保法案が可決されました。これは、昨年の7月1日に、自民党、公明党の合意によって、内閣閣議決定により、一方的に決定されてしまいました。圧倒的多数をもつ、与党ですから、これは民主主義国家である以上は止むを得ないことです。しかし、私には一縷の望みがありました。それは、昨年の12月に行われた衆議院選挙でした。国民が、「アベノミクス」という、飛ばない3本の矢に目を奪われ、消費税を上げなくて良いかを問いますとの、安倍総理の言葉に多くの国民が、それなら良いか?ということで、選挙に行った人は、僅か52%でした。その中で、1人区は、野党がほとんど全敗、比例区では、17%の支持率の自民党が、勝利し、300議席を超えるという結果になりました。
 これまでの流れでいきますと、野党は、力なく今回の国会で、反対はしても、8月中に可決されていたかも知れません。それに待ったをかけた原動力は、いわば市民運動、市民革命といっても良いかも知れません。
 衆議院の憲法審査会で、3人の憲法学者・自民党推薦の学者までも、「集団的自衛権は、憲法違反です」と、明確に意見を述べたことから流れが変わりました。
 そこからは皆様も良くご存知と思います。8月30日の全国反対集会では、国会周辺では、12万人の人たちが反対運動のために集まりました。遠くは、大阪・名古屋などからも来ていたといいます。全国では300箇所を超えるところでの反対運動です。私の計算では、有に百万人を超えていたと思います。弱気の野党の議員たちも、これは、自分たちも、しっかりと戦わなければならないと自覚したのではないかと思います。
 そして、総理大臣・防衛大臣の発言がコロコロと変わりました。一例を挙げますと、総理は、集団的自衛権の行使の1つに、ホルムズ海峡が閉鎖された時には、わが国の存立に危険がおよぶので、アメリカと協力して戦うこともあるといいました。ところが、アメリカは、イランと平和的合意にたっしました。
 集団的自衛権とは、結局、同盟して、アメリカからの依頼があれば、何時でも、どこへでも出かけて行って、一緒に戦いますということです。政府は、決してそんなことはないと豪語しています。しかし、戦争にいたる理由は、正に集団的自衛権であるからということで、ベトナム戦争、アフガニスタン、イラク戦争が起こっています。
 2012年に、アメリカの国務副大臣アーミテイジが、日本の政府への要望をそっくり受入れての法案が、今回の安保法案に他なりません。国会で、山本太郎議員が、特別国会で、このことについて、「日本はアメリカの言うことを何でも聞くのですか?アーミテイジさんの要望と全く同じということはどういうことですか?」と、質問しました。その答えをしたのが、岸田外務大臣、「それは偶然の一致ということと思います。」でした。外務大臣・総理大臣は、アメリカと度々連絡を取り合い、ガイドライン、さらに、5月には、総理がアメリカの国会で、集団的自衛権は、夏には可決しますと、約束をしして来たのですから。アメリカの国会で、安倍総理が英語で演説をしたのは、集団的自衛権に対する約束へのお礼ではなかったか?と、思わずにはいられません。
 国会を軽視し、世論も支持率も、聞く耳をもたなかったことがわかります。この法律を支持しているのは30%前後に過ぎず、60%の国民が反対をしているのです。本来ならば、衆議院を解散して、国民に信を問うべきだと思いますが、昨年の12月に、「今なら勝てるぞ」との世論調査をみて解散に決意したのだと思います。過去のことをあれこれ書いても、失望・落胆に終わってしまいます。
 ここからは、これからのことについて書きます。日本弁護士会を中心に、集団的自衛権が違憲であることについては、早速裁判になることと思います。最高裁判にいたるまでには、かなりの年月がかかることかと思いますが、かつて、最高裁判長をした人、内閣法制局長をした人たちが、異口同音に「違憲」といっています。言わないのは、現在の横畠法制局長だけです。本人も、内心では「これは違憲ではないか?総理から頼まれているから、まあ、結論は後に任せて、今のところは、総理の味方をしておこう。自分はそのために頼まれたのだから…」とでも考えているのではないかと、私はずっと考えておりました。さらに加えて、将来は、何か美味しい約束をしてもらっているのではないかと思います。例えば、来年の参議院選挙の全国比例の上位に乗るのではないかと、私は推測しています。東京大学法学部出身の、横畠さんに、分からないはずはないかと思います。
 次に心配されることは、集団的自衛権とは、日米連合軍での戦です。「アイシル」では、すでに、日本の大使館を爆破しろとの号令をかけています。日本の存立を危ぶむ戦いよりも、アイシルの自爆テロのリスクの方が大きいと私は心配しております。今年の初めには、後藤健二さんが、アイシルによって殺害されました。その時に、総理はエジプトで、「我々はテロには屈しない。2億ドルを、支援する」といいました。あれがなかったら、後藤さんは救出できたのだと、多くのジャーナリストが書いております。つまり、金を出して救出することはしないとのメッセージですが、エジプトでの宣言は、アイシルへの戦線布告ともとれます。これから海外旅行をする人は、極論を言えば、いつ、アイシルの攻撃に合うか、覚悟しなければならないと思うのです。中国との戦いがあるとはとても思えません。
 中国には、1千万人の労働者が雇用されているのです。多少のいざこざがあるにしても、戦争になるようなことはないと思います。日本は、中国から50%を超える食料を輸入しているのです。こちらの方が心配です。今、鎖国をしたら、食料自給率が40%です。つまり、10人の内、4人分の食料しか日本にはないということなのです。アメリカでは、食料自給率は130%と聞いています。食べ物がなくて、どうして戦えますか?それは、北朝鮮も同様と思います。今は亡き、後藤田正晴自民党官房長官が言いました。「戦争には勝者も敗者もない。あるのは廃墟だけだ。」
 さらに心配されることが幾つか考えられます。
 1つ目は、自衛隊への勧誘として、奨学金を受けて、返済ができない学生には、自衛隊への勧誘が勧められるのではないか?
 2つ目は、非正規社員にも、自衛隊への勧誘がおこなわれるのではないか?
 3つ目は、生活保護を受けている家庭の子どもたちには、将来自衛隊に入るように、勧められるのではないか?
 4つ目は、武器を製造している重工業の若者たちには、インターンシップとして、2・3年間研修をしいるのではないか?なぜならば、、武器輸出が可能となり、その企業は、そのことによって財政が豊かになるのですから、政府から勧められれば受けざるを得ないとなります。徴兵制は当分実施されることはないかも知れません。しかし、先に書いたことが起きるとしたら、見えない力での強制力とは言えないでしょうか?
 日本には、福島の原発が未解決、沖縄の基地問題も未解決、地震・津波・台風・豪雨・土砂崩れ、毎年起きる災害に対して、政府の対応が問われているのです。
 さて、最後にここ数年の総理大臣を始め、日本のトップリーダーの言葉の無責任な発言を書いておきます。
 オリンピック招致に際して、安倍総理は「今や福島はアンダーコントロール」といいました。10万人の人たちが県外に避難しており、放射能が流出している、この時に、アンダーコントロールというのは、事実誤認です。
 2012年、衆議院選挙の後、黒田日銀総裁は言いました。「2年以内に、2%のインフレにします。それができない時には、私は辞任します。」しかし、あれから2年がたっても、インフレ率は1%にもなりません。デフレは続いています。そのことへの、訂正やお詫びはありません。ますます金融緩和で、80兆円をばら撒くようです。民主党時代でも、野田総理は、「福島は収束しました。」と言いました。マスメディアの発言はアドバルーンに過ぎないことが良く分かります。
 民主主義について、私が中学時代に、社会科で聞いた言葉を思い出します。「民主主義とは、ベンサムがいうように、最大多数の最大幸福なのです。」。果たして幸福かどうか?疑問がのこりますけどね。
 秋にすざく虫の合唱を聴いて、心を静かにする時をもちたいと思います。
 「かけつけは 昔 宴会 今 戦地」(時事川柳より)
 次回は、10月10日を予定しております。







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